前回の記事で犬には犬なりのストレス・サインがあることが示されていますが、それは同時に問題行動のサインともなります。
今回はそのうちの1つに散歩中ないし庭に放し飼いした時に見られる、「土を食べる(舐める)」行為です。
食糞やマーキングと並ぶ犬の問題行動の1つですが、これの意味や理由を把握している飼い主の方は少ないのではないでしょうか。
もし、犬の散歩中にそういう行為を見かけた時は問題行動の顕在化だと思って、早急に対処していくことが欠かせません。
そこで今回は土を食べたり舐めたりする行為の裏に隠された危険なサインを是非考察していきましょう。
異嗜(異食症)
土に限らず、犬には異嗜(異食症)という問題行動があり、これが常に飼い主の頭を悩ませる問題の一つです。
具体的にはドッグフードや水以外のものを口に含んだり飲み込んだりしてしまう行為のことで、「食糞」もその1つになります。
食べるものとして挙げられるのは大体以下のものです。
- 排泄物
- 石・土
- 衣類(タオル・靴下)
- プラスチック・ゴム製品
- 玩具
こういったものを噛む傾向にあり、土を食べたり舐めたりするのはその一例だと思えば、決して不思議なことではありません。
とはいえ、しつけをしっかりしていれば起こるはずのない問題行動であることに間違いはなく、放っておいていい問題ではないでしょう。
異嗜(異食症)の原因
それではなぜ犬はこうした異嗜(異食症)を行ってしまうのかを考えてみましょう。
その原因を追求しないことには解決の糸口が見えてこないので、ここではしっかりその原因を見極めていきます。
承認欲求
食糞の記事でも説明しましたが、まず挙げられるのは飼い主に認められたいという承認欲求が根底にあります。
飼い主とその家族の注目を引きたいがために、異嗜を行えば家族が注目してくれるだろうという認識なのです。
これは賢い犬であればあるほど見受けられる傾向であり、敢えて戦略的にやっている部分があります。
犬は常に飼い主に見られたい、注目されたいという欲を持っていますので、あまり無視しないようにしましょう。
犬が起きている間、特に子犬期はしっかり構って面倒を見てあげることが大事です。
味自体に嗜好を感じる
2つ目に、これが最も厄介なパターンですが、異嗜によって味自体に嗜好を感じてしまった場合です。
文字通りの「味を占める」であり、その感触や味が病みつきになって癖として抜けなくなってしまっています。
人間でも例えば食べ物ではないはずの氷を齧って食べることがありますが、それに類似した行為と言えるでしょう。
土を食べたり舐めたりするのも似たようなものであり、土の味が快楽になってしまっているのです。
これはもう生理現象のレベルになってくるので、動物病院で診て頂くのが一番ではないでしょうか。
ストレス・サイン
そして3つ目に、ストレス・サインによるものであり過剰なしつけを行うと抑圧の反動からこういう行為に走ります。
具体的にはしつけの逆効果で、クレートやケージに入れて無視したり、リードを短く持って下を向かせないようにテンションをかけて阻止したりといったことがあるのです。
それにより、寂しい思いや苦しい思いをさせるとかえってストレスがたまり、異食に繫がっているケースも無きにしも非ずという状況でしょう。
また、引っ越しや子どもが生まれるといった日常生活における大きな変化や刺激が犬にストレスを起こさせる原因になります。
犬は安定した平和な日常をこそ望みますから、人間の都合で勝手な日常の刺激を押し付けることはマイナスになってしまうのです。
犬に土を食べさせない対策
それでは、砂や石を食べてしまう原因別に対処法を考えてみましょう。
一体どのような対策を行えば、犬は危険な行為をしなくなるのでしょうか?
厳しすぎず優しすぎず
承認欲求で飼い主や家族に見てもらいたいから行うという場合はある程度犬の自主性に任せるようにしましょう。
抑圧が一番いけないことなので、噛んだからといって無視したりせず、ひとまず犬が満足するところまではさせてあげてください。
人間が焦って騒ぐとよけいに口の中のものに対して執着し、その結果飲み込んでしまうようになりますので逆効果です。
自然な行動のものは無理に食べさせなくする必要はありませんが、それも結局は頻度によります。
砂や土は掘ってなめて食べる程度ならウンチで出てきますし、石といっても砂利のような細かいものを少しなら大体はウンチに混じって出てきます。
土を大量に食べる場合はどこかに問題ありですので早めに動物病院へ連れていって受診しましょう。
安定した環境を与える
ストレスによるものはその原因を取り除くことが必要であり、何が愛犬にとってのストレスになっているか、観察して取り除いてあげましょう。
引っ越しや、子どもが生まれたなど日常や環境の変化によるものは、犬の気持ちになって接してあげれば時間が解決しますので、犬側の立場で考えてください。
引っ越しした場合はしばらくの間、一人ぼっちで留守番させないようにすることが大切です。
荷物の片づけなども人間側はさっさと終わらせたいところですが、なるべくバタバタしないようにしてあげると犬は早く落ち着きます。
お散歩コースも無理せずゆっくり開拓することで、ストレスを軽減し、自然に収めることが出来ます。
ドッグフードの見直し
そして犬が土に嗜好を感じている場合はドッグフードやおやつが栄養不足である場合がほとんどです。
言っておきますが、犬の栄養素はドッグフードでさえあればほとんどを賄うことが出来ます。
しかし、国産のドッグフードは粗悪品が多く、犬の健康を害してしまうくらい健康に配慮されてないものばかりです。
そうならないように、犬の健康にきちんと配慮された良質のドッグフードを選ぶようにしてください。
また、食品添加物が含まれているようなタイプもNGなので、絶対にドッグフードは海外産の良質のものを与えましょう。
食事面と言った基礎基本を見直していくことで、異嗜もまた直していくことが出来ます。
ミネラル不足or過剰摂取
さて、ここからもう1段階掘り下げていくと、犬が土を食べる背景にある栄養不足の正体はミネラルにあります。
ここさえ突き止めることができれば対策はより簡単に打てますので、改めてミネラル不足とその逆の過剰摂取について説明しましょう。
ミネラル摂取は簡単ではない
ミネラルを補うことは簡単ではなく、特にドッグフードをほとんど食べずに犬のおやつをメインで与えているご家庭の場合尚更それは難しくなります。
ミネラル不足を予防するにはドッグフードが一番ですが、それだけだと足りないという犬種も中にはいるので気をつけてください。
ベスなのは犬用のミネラルサプリメントを与えることであり、ドッグフードにプラスして1日に必要な分のミネラルを簡単に補給することが可能です。
このミネラルが不足しているからこそ、犬は土の中から天然のミネラルを摂取しようと必死になるのではないでしょうか。
土は確かに栄養分がたくさんありますが、その分雑菌なども沢山あるので決して健康的・衛生的なものではありません。
ですから、多少お金はかかってもミネラル不足を解消することを優先してください。
過剰摂取への対策
しかし、ミネラルは摂取しすぎても体に良くありませんので、サプリメントを与える場合には必ず1日の摂取量を守って与えるようにしてください。
またミネラルはドッグフードにも含まれているので、ドッグフードに含まれている分を引き算した時に必要な量を与えることが大事です。
もしもサプリメントを使うことに抵抗があるようであれば、野菜などのミネラルが豊富な食材から補給させてあげましょう。
ミネラルを補給するにはカルシウム・リン・カリウム・マグネシウム・鉄・亜鉛といった成分をバランス良く摂取する必要があります。
煮干しならばカルシウムが摂取できますし、豆腐はリンとマグネシウムを同時に摂取できる食材ですのでおすすめです。
このように犬が食べられる食材で上記の成分が含まれている食材を探し、1日少しずつ与えるようにしましょう。
ミネラル不足だと貧血で倒れる
ミネラル不足だと貧血で倒れたり、胃腸にも負担がかかったりと犬の健康を脅かす病気に発展していきます。
それを異食症で治そうとして余計に悪化させてしまい、取り返しのつかないことになってしまうのです。
貧血で倒れたりなどということが決して日常化しないように、常に犬への目配り・気配りを欠かさないでください。
そうした病気こそが一番心配されることであり、それがなくなってしまえば大した問題にはなりません。
ヒヤリハットを減らし、是非快適なペットライフへとつなげていきましょう。
コンサルティングをして貰おう
上記してきた異嗜(異食症)を解決するのに一番いいのはコンサルティングをしてもらうことではないでしょうか。
特にブリーダーやトレーナー、獣医の意見は犬を知り尽くした専門家なだけあって、沢山の回答を持っています。
犬に異常や問題行動が出るということは犬と飼い主の信頼関係やしつけに原因があることは間違いありません。
徹底したネガティブシミュレーションとコンサルティングこそが問題行動を減らすステップへとつながっていきます。
ですから、飼い主も犬もしっかりとコンサルティングを受けることで、だいたいの問題は解決していくのです。
そのための環境づくりを常日頃から心がけてやっていく工夫を飼い主や家族がしっかり考えましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は犬の土を食べる行為について、改めて行動学の観点から総合的に論じてきました。
さすがに石を何個も食べることが日常だというなら、体の不調や生活のストレスを見直してください。
しかし、犬はたまに庭の穴掘りをしますが、掘って柔らかい土をなめたりすることがありますが、特に問題はありません。
ゴミや食べ物が道端に散らかっていても、匂いは嗅ぎますがフン!とはなをならすか、おしっこをかけようとします。
もちろんこう言ったことはしないのがベストですが、それが全てではないので暖かく見守ってあげましょう。