今回は今までしつけの記事で慎重に避けてきた「体罰」についてお話しさせて頂きます。
飼い主が愛犬をしつける中でそのままならさから一度は体罰が頭を過ぎった方も居るのではないでしょうか。
愛犬が人の手が近づいてきたら緊張するという経験は一度体罰を振るった方ならあると思います。
人間がされて嫌なことをペットがされて嬉しいわけがありません。嬉しがっていたらただのドMです。
そこで改めて教育論と犬のしつけの違いも含めて「体罰」について徹底解説していきましょう。
犬のしつけに体罰は不要
まず結論から言ってしまえば、当然ながら犬のしつけに体罰は厳禁です。絶対にやってはいけません。
日本獣医動物行動研究会では明確に「しつけや行動修正のために『体罰』を用いること、またこれを推奨する行為に反対します」 と体罰に反対する声明を出しています。
軽い気持ちでペシっと頭を叩くだけでも、体の小さな犬にとってはとても恐ろしい経験となります。
飼い主から受ける体罰が積み重なり、飼い主が安全な存在ではなくなるのは非常に大きな問題です。
常に不安や恐怖を感じながら暮らすことは、犬にとって大きな苦痛ですし、新たな問題行動につながる恐れもあるのです。
体罰によって犬に起こる副作用
もし飼い主が犬に体罰を振るい続けるとどのような副作用が起こるのでしょうか?以下に挙げてみます。
動物虐待
まず飼い主が体罰を与え続けると、愛犬の命を脅かす動物虐待になりかねません。
近年特にこの動物虐待の問題は深刻化しているので、絶対に避けなければならないのです。
その末に死なせたとあれば今の時代は簡単に特定され逮捕・受刑者となってしまいます。
恐怖からの萎縮
2つ目に体罰を与えた飼い主や体罰を与えられた時の環境に対して、恐怖心を持つようになります。
それだけならまだしも、食事や散歩すらもまともに出来なくなるでしょう。
自分より遥かに体の大きい人間からうける体罰は、恐怖以外の何物でもありません。
警戒し攻撃的になる
3つ目に狩猟犬としての野性味が刺激され、体罰を避ける為に先制攻撃するようになります。
飼い主が近づいただけで無駄吠えをしたり、また手を近づければ容赦なく噛みつくのです。
しかも回数を重ねれば重ねるほどどんどん症状は悪化していくでしょう。
他の人や犬にも攻撃する
最愛の飼い主が信じられなくなると今度は他の人や犬に対しても攻撃的になります。
しつけが上手く行ってない犬の殆どが他者に対して攻撃的になる理由の一つはこれなのです。
逆にいえば飼い主がきちんとしていれば、犬は攻撃的にならずに済むでしょう。
問題行動が悪化する
体罰を行う時は大体犬が何かしらの問題行動を起こしたときでしょう。
しかし、暴力では何も解決しないどころか新たな歪みが生まれるだけです。
正しい行為を覚えさせないことには改善されることはありません。
体罰の正体
ここからも分かりますが、犬の体罰の正体は単なる飼い主の犬に対する「支配欲」でしかないのです。
愛犬を「生き物」としてではなく「奴隷」もしくは「駒」としか見ていません。
これは犬だけではなく親と子供、教師と生徒、上司と部下全ての関係において言えることでしょう。
まして自分に都合のいいペットとなれば尚更そういう支配欲が生まれても仕方ないのです。
人間には加虐性(サディズム)と被虐性(マゾヒズム)の両方が内在しています。
体罰はこの中で加虐性(サディズム)がとことんまで肥大化・暴動を繰り返した結果です。
体罰としつけの違い
体罰としつけの境界線は一体何でしょうか?具体的には以下の4つです。
- 犬への愛情・思いやりがあるか
- 犬の個性をきちんと大事にしてあげているか
- 指導の仕方に筋がきちんと通っているか
- きちんと出来たら認めてあげているか
そう、大事なことはきちんと「教え導く」という所にポイントがあります。
「従わせる」のではなく「導く」のです…犬が成長したい方向へ。
ですから体罰としつけは似て非なるもの、それどころか正反対だと言えるでしょう。
体罰をしてしまった場合の対策
体罰で失われた信頼関係を取り戻すのは容易ではありません。
新たな気持ちで時間をかけて、愛犬との信頼関係の回復に取り組みましょう。
具体的には以下の対策です。
犬のニーズを満たす
犬が飼い主を困らせる時は犬が求めるものが満たされていないことが殆どなので、愛犬が必要としている環境をしっかり与えることができているか再確認しましょう。
具体的にはバランスの取れた食事や適切なメディカルケア、散歩や適度な運動など日頃からの細かいコミュニケーションです。
これが満たされれば犬は安心して日々の暮らしを送れるようになり、結果として、飼い主がやめてほしいと思うような行動をとる機会は減っていきます。
勿論だからといって「甘やかし」はいけません。我慢させるべき所はしっかり我慢させてください。
正しい行動をしたらどんどん褒める
現在、もっとも有効とされているしつけの方法はよい行動をどんどん褒めて伸ばしていくという方法です。
犬に体罰を与えることで言うことを聞かせるような間違った訓練方法はすぐにやめましょう。
飼い主がしてほしくないと思うような行動を犬が取ることは必ずあるので、犬は決して便利な存在ではありません。
逆にしてほしい行動をとっている時はしっかり褒めてあげましょう。
犬をリラックスさせる
犬が飼い主に対して怯えている場合は一緒の空間を過ごすことで犬がリラックスできるようにしてください。
怯えている犬に無理やり近づこうとはせず、まずはゆったりと穏やかな時間を一緒に過ごすだけでいいのです。
やがて愛犬が飼い主さんのことを安全な存在だと認識できるようになります。
警戒心を解くところからまずやり直しを図らなければなりません。
威圧感を与えない
犬が飼い主さんにリラックスして近づけるようになったら、愛犬と楽しくコミュニケーションです。
この時のコツは威圧感を与えないように腰を低く、目線の高さをあわせるようにして接しましょう。
もしくはただ何もせずじーっと微笑んで眺めているだけでもいいかもしれません。
まず懐に飛び込んで受け入れて貰わないことには改善しないので、威圧感は絶対に与えないことです。
困ったら専門家に相談
愛犬の困った行動が解決しないときは、なるべく早めに獣医やブリーダー・トレーナーに相談することをおすすめします。
愛犬の問題行動の原因は大変複雑ですぐに解決するようなものではありません。
体罰でなんとかしようとして愛犬との関係がこじれてしまうのは本当に悲しいことです。
もしくは一度プロのブリーダー・トレーナーに頼んで改善してもらうのもありでしょう。
まとめ
犬と仲良く快適に暮らすために必要なしつけで体罰を加えて犬との関係が壊れてしまっては本末転倒でしょう。
犬にとっても飼い主さんとの暮らしが幸せなものではなくなります。必要なのは犬のニーズを満たし良い行動を褒めることです。
適切な方法でじっくりと取り組めば、やがて関係は改善できるでしょう。
犬は決して飼い主の都合のいい道具でも何でもなく、立派な生き物ですから個性を大事にしてあげてください。