こちらの記事で盲導犬訓練士について一通り解説してきました。
ではその盲動犬訓練士に育てられた盲導犬はどんな仕事をするのでしょうか?
中々目にする機会のない盲導犬の仕事について解説していきましょう。
その歴史的背景やライフステージなどについても併せて触れていきます。
盲導犬の特徴
盲導犬は視覚障害者の安全かつ快適な歩行をサポートする為に訓練された犬です。
国家公安委員会の指定法人(全国11団体)により、育成・認定されています。
盲導犬の大きな特徴は何と言っても体につけている白い胴輪(ハーネス)ではないでしょうか。
ハーネスを通して盲導犬の動きが盲導犬ユーザー(使用者)に伝わり、安全に歩くことができます。
たとえば、ハーネスが少し左に動いて止まると左に角がある、ハーネスが少し上に動いて止まると昇りの段差か階段があるのです。
このようにハーネスの動きから伝わる情報が目の不自由な人の安全な歩行を支えます。
盲導犬の仕事
ではそんな盲導犬の具体的な仕事内容ですが、どのようなことが挙げられるのでしょうか?
道路の側をまっすぐ歩く
当然のことですが基本は道路側を真っ直ぐ一定の速度で歩くことです。この際に大事なことはあくまで盲導犬ユーザーの速度に合わせること。
盲導犬が一方的に引っ張っていくなどということは絶対にあってはなりません。あくまでも盲導犬は視覚障害者に寄り添うのが基本です。
指示された方向に進む
盲導犬ユーザーは目的地までの道順を頭に描きながらハーネスから伝わってくる盲導犬の動きや周りの音や足元の変化などを基に周囲の状況を判断します。
そして盲導犬に指示を出し、その目的地まで辿り着けるようにガイドをしてあげるのです。あくまでも主体は盲導犬ユーザーにあることを忘れないでください。
交差点や段差で止まる
目の不自由な人は信号の判断も車や人の流れを基に行いますが、基本音でしか判断出来ません。
そこで大事なことは盲導犬がきちんと交差点や段差に来たら一度止まって盲導犬ユーザーに被害が及ばないようにすることです。
障害物をよける
当然ながら障害物は全てよけるように盲導犬がリードしてくれますので、盲導犬ユーザーは基本頼りっぱなしです。
目的物へ案内する
そしてこれが一番大事ですが、どんな道を通っても目的地や目的物への案内をしっかり行うことです。
警察犬以上に人と犬との信頼関係が重要視されており、より双方向性のある関係ではないでしょうか。
盲導犬の歴史的背景
盲導犬誕生の裏には様々な歴史的背景があります。
紀元1世紀にあったイタリアのポンペイという村の壁に目の不自由な人が犬と一緒に歩いている様子が描かれていたそうです。
更に17世紀の書籍には犬の首輪に細長い棒をつけ盲導犬として訓練している様子も描かれていました。
現在のような組織的な盲導犬の訓練は第一次世界大戦後の1916年にドイツで始ったものだとか。
日本に初めて盲導犬が紹介されたのは1938年(昭和13年)に盲導犬を連れて旅行中のアメリカ人青年ゴルドン氏が日本に立ち寄り、講演してまわったことが最初です。
1939年(昭和14年)にドイツで育ち訓練を受けた4頭の盲導犬(シェパード犬)が輸入され、ドイツ語の命令語を日本語に教え直しました。
その直後日本の交通事情などに合うようにもう一度訓練されて、失明軍人に寄贈されたそうです。
その後、戦時中に消えた盲導犬育成でしたが戦後復興の中で研究が始まり、1967年に日本盲導犬協会が設立されて今に至ります。
歴史的背景で言うと警察犬に比べてかなり昔から予知されていたことが分かり、その歴史の深さに驚かされる次第です。
盲導犬のライフステージ
盲導犬のライフステージですが、一体どのように成り立っているのでしょうか?
誕生~生後2ヶ月
盲導犬の素質を持った両親から子犬が繁殖され盲導犬候補として育てられます。 この時期は主として母犬や兄弟犬と共に生活し、社会性を養うのです。
どの犬種が向いているのかはまた別個解説しますが、この時期はまだ本格的な指導・訓練は行いません。
生後2ヶ月~1歳→パピーウォーカー
通称パピーウォーカーと呼ばれるボランティアの一般家庭に預けられます。この時期の目的は人間との社会性を養うことです。
子犬が12週齢前にボランティア家庭に移った場合90%の確率で盲導犬になれるのに対し、子犬が犬舎に12週齢以上おかれた場合その確率が30%にまで落ちます。
この時期に人間から受ける愛情がいかに重要かを示す一例と言えるでしょう。
1歳~2歳→訓練
1歳になった頃から約1年間かけて盲導犬として必要な資質をトレーニングします。 具体的には以下のプロセスです。
服従訓練
人間と生活する上で必要となる基本的な動作(食事、トイレ、座れ、伏せ、待てなど)を訓練します。
指示語を日本語を覚えさせた場合、女性言葉や方言による微妙な差異が出て犬の混乱の原因になるため、指示語は英語で統一されるのが一般的です。
誘導訓練
ここでは「道路の端を歩く」、「段差で立ち止まる」、「障害物を回避する」、「目標物に誘導する」 など人を導くための訓練を行います。
目隠しテスト
訓練者が目隠しをして実際に盲導犬を使って仕事の予行演習を本格的に行います。
共同訓練
実際に目の不自由な方が犬を使って犬の適性を見極める、実地訓練です。この訓練(4~6週間)を通して視覚障害者の方も盲導犬の使い方や世話の仕方を覚えます。
盲導犬に関する必要な知識を身につけ、また盲導犬と視覚障害者とがお互いを理解し合う重要な期間でもあるのです。
1歳半~10歳→独立
共同訓練を終了すると、視覚障害者は自宅に盲導犬を連れて行き共同生活が始まります。盲導犬として独立です。
10歳~→引退
盲導犬の引退に年齢制限はありませんが、10歳くらいになると目を始め老化する部分が多くなってきますのでおおよそこの位の年齢で引退する盲導犬が多いようです。
引退後はペットとして引き取られたり、リタイア犬ボランティア(引退した盲導犬を専門に受け入れるボランティア家庭)の元に引き取られます。
盲動犬ユーザーに出会ったら
もし街中などで盲導犬ユーザーを見かけたら、盲導犬の横にいる目が見えない・見えにくい人のことをよく見てください。
そこで視覚障害者がと盲導犬の関係性を含め様々な情報がそこから得られるはずです。
もし、盲導犬ユーザーが困っているようだったら「何かお手伝いすることはありませんか?」などと声をかけてもいいでしょう。
あなたの勇敢な一言や助言が盲導犬と盲導犬ユーザーを助けてくれるかも知れません。
まとめ
盲導犬は公共施設・公共交通機関・不特定多数の方が利用する病院・スーパー・レストラン・ホテルなどを利用することも認められており、平成14年には「身体障害者補助犬法」という法律も施行されました。
しかし、まだまだ補助犬法の事や、盲導犬に対するご理解が不足しており、ユーザーが入店しようとすると「犬は禁止」「他の方の迷惑になる」と入店や利用を断わられるのが現実です。
理解が深まれば盲導犬は社会に受け入れられますし、盲導犬が社会に受け入れられることで盲導犬使用者の行動範囲はもっと広がっていきます。
視覚障害者が盲導犬と安心して暮らせる社会を一緒につくる為に影ながら社会に貢献している立派なプロの犬なのです。