これまでの記事で何度か犬の「おしっこ」のことを触れてきました。
今回はそれを踏まえた上で「マーキング」について解説していきます。
よく漫画やアニメ、場合によってはドラマなどでも犬のマーキングを見かけることがありますよね。
果たして何故犬がそのようなことをするのか、また排尿との違いや対処法なども説明しましょう。
マーキングとは?
無駄吠えや噛み癖と並ぶ犬の特徴、それが「マーキング」です。
電柱や塀の角など様々な場所に排尿を行って自分の印をつけることを意味します。
マーキングは犬の本能的な行動であり、縄張りを守るため、自分の存在を他の犬に誇示するために行うのです。
よく見るとわかしますが、マーキングの際にはなるべく高い位置を狙ってオシッコをかけようとします。
これは他の犬に自分は体が大きく強い犬だと思わせるためであり、小型犬の中には逆立ちして行う犬までいるのです。
人間で言えば「俺って凄いんだぜ」というジャイアニズムに基づくマウンティングでしょう。
マーキングの種類
そんな犬のマウンティング=マーキングですが、これには幾つか種類があります。
幾つかのケースに分けて説明していきましょう。
野外でのマーキング
まず一番目立つのはやはり野外でのマーキングです。これにはどのような意味や理由があるのでしょうか?
自己紹介
犬の嗅覚は大変優れており、自分以外の犬の尿を嗅いだだけでその犬の性別や年齢などが分かると言われています。
そのため犬があらゆる場所でマーキングをするのは自己紹介の意味があるのです。
他の犬の尿を嗅ぐことで、「この犬の行動範囲はここら辺なんだな」などという情報収集を行っています。
人間が思っている以上に犬は高度な情報合戦をこれによって行っているのです。
繁殖相手を探している
マーキングはオスの犬がするものだと思われがちですが、メスの犬でも見られる行為です。
特に発情期に入ると積極的にマーキングを行います。
その匂いをオス犬たちが嗅ぎ、自分が繁殖相手になろうとその上にさらにマーキングをしていくのです。
こうして野生の犬同士が惹かれ合い交尾するということも珍しくありません。
屋内でのマーキング
犬は野外だけではなく、屋内(家内)でもまたマーキングすることがありますが、その理由は何でしょうか?
ストレスが溜まっている
飼い主からなかなか構ってもらえなかったり散歩を満足がいくまでできていなかったりすると、ストレスが溜まって室内でマーキングをすることがあります。
室内でマーキングをすることで、飼い主の気を惹こうとしているのです。
日頃から散歩や室内での遊びを含めしっかりと愛犬とコミュニケーションをとりましょう。
トイレを覚えていない
室内で頻繁に行う場合はマーキングではなく通常の排尿なこともあります。
トイレの場所を覚えていないため、室内のトイレ以外の場所で排尿をしてしまう犬も中にはいるでしょう。
特に子犬の時期に多く見受けられ、トイレのしつけをしっかりと行うことにより室内でのマーキングが治ります。
引っ越しに伴う環境の変化
引っ越しなど環境の変化が会った場合もまたストレスを抱えたり、分離不安症や恐怖に陥ったりします。
犬が求めるのは変わらない場所で過ごし続ける安定性なので、それが阻害されると決していい気はしません。
だからこそその引っ越した場所が自分の居場所であるという自己主張の為にマーキングを行うのです。
ここまで行くと、飼い主の手には負えない場合もあるので気をつけましょう。
排尿との違い
それでは、マーキングと通常の排尿との違いは何なのでしょうか?
本能的行為か生理現象か
一番の違いはマーキングは本能的行為であり、排尿は生理現象で行っていることです。
両者は似て非なるものであり、排尿は意識的に行っているものではありません。
一方のマーキングは本能といえど自分で意思決定を下して行っているものです。
少量の尿か多量の尿か
2つ目に少量の尿か多量の尿かという違いがあります。
マーキングでは飼い主さんが気づかないくらいの少ない量の尿を出しますが、これは多くの場所にマーキングをしなければならないため量を調節しています。
また、電柱のような垂直に立っているものにマーキングをすることが多いでしょう。
一方排尿であれば草むらなどの場所でも行うものであり、場所は選びません。
そして排尿は基本的に全ての尿をその場で出し切ってしまうので、やはり無意識に行っていることになるのです。
マーキングへの対処法
以上でマーキングと排尿との違いなど細々と説明してきましたが、飼い主をはじめ人間にとって決して好ましい行為ではありません。
ここではマーキングをどうやって辞めさせるかの対処法を解説していきましょう。
去勢・避妊手術をする
まず野外・屋内を問わず去勢・避妊手術はしっかり行って下さい。
オスはテストステロンと呼ばれるホルモンが作られオス特有の行動を起こしますし、メスも発情期になるとマーキングを行います。
そのホルモンを去勢手術によって減少させるので、結果的にマーキングも抑えることができるのです。
アメリカの研究でも手術後オス犬のマーキングが大幅に減少したとのデータが出ています。
さらに、去勢・避妊手術は成犬の7~8歳以降での腫瘍やがんの減少、寿命が伸びるなど良い面も沢山あるのです。
費用は高いですが、まず去勢・避妊手術はしっかり行っておきましょう、多頭飼いを防ぎたい場合は特に。
愛犬との主従関係を明確にする
大前提として、基本的なしつけを再確認して愛犬との主従関係を明確にしてください。
トイレのしつけ同様にしっかりと「してはいけない場所」というのを教えてあげましょう。
逆にいえば、場所を問わずマーキングしてしまう犬がいたら、それは野生の犬か飼い主のしつけが行き届いていないということです。
屋内(家内)のマーキング対策
去勢・避妊手術を行った上で今度は屋内(家内)のマーキング対策です。
徹底したトイレトレーニング
まず子犬の時期は徹底したトイレトレーニングを行って下さい。
トイレトレーニングが出来てないと犬はどこの場所で排泄を行えばいいのか分かりません。
トイレトレーニングのしつけはこちらの記事に書いてありますので、そちらも参照のこと。
慣れるまで行動範囲を制限する
引っ越しなどの事情で不安になってストレスが溜まっている場合は行動範囲を制限しましょう。
犬は兎に角安定した無難な環境を求めるので、新しい居住環境に慣れるまでには時間がかかります。
こういう時は下手に動かさず行動範囲を限定して、きちんと縄張りを持たせましょう。
慣れてくれば住めば都でマーキングをしなくなるので、それだけでもだいぶ違います。
野外のマーキング対策
次に野外における散歩中のマーキング対策を解説していきます。
排泄がきちんと終わるまで散歩に出さない
まず排泄がきちんと終わってない段階で散歩には行かせないでください。特に食後は要注意です。
マーキングを行うのも尿が膀胱に溜まっているから行うので、事前に排泄を行っておけば済みます。
少しくらいのマーキングは仕方がないと思っている飼主さんは多いでしょう。
しかし、犬を飼っていない人からすれば、自分の家の塀はもちろん公共の場でも尿をかけられるのは不潔で汚いと思っています。
きちんとその辺りのイロハを教え仕込むことを忘れないでください。
水でキレイに流すマナーを忘れない
とはいえ、どうしても散歩中に水を飲んだりして、その後マーキングを行ってしまう場合もあるでしょう。
その際には水筒やペットボトルを持ち歩いて、愛犬がマーキングした時はその箇所に水をかけて流すというマナーを忘れないでください。
また、マーキングして欲しくない場所でしようとした場合にはリードをしっかりと引き素早くその場所を離れるなどの工夫もすると良いでしょう。
こういうちょっとした工夫がマーキングによる異臭という被害を防ぐことにも繋がります。
獣医・ドッグトレーナーに相談する
上記のような対策を行っても、どうしてもマーキングが治らない場合は獣医・ドッグトレーナーに相談してください。
飼い主だけでは気づけない専門家ならではの視点からの見解も頂けますし、そちらの方が確実でしょう。
また、しつけ教室などであればコースに応じたしつけの訓練をしてくださり解決へ繋がることもあります。
とにかく一人で抱え込まないことが大事です。
まとめ
本能的な行動だからとマーキングを野放しにする飼い主も沢山いらっしゃいますが、世界は犬の都合で回っている訳ではありません。
上記したように、犬のマーキングは人間でいえば「俺って凄いんだぜ」というマウンティングと同じ野蛮な行為です。
そのような行為を助長させないためにも、徹底したしつけと管理でマーキングを防ぐことが大事ではないでしょうか。
マーキングをなくすことが出来れば飼い主も犬も、それ以外の人や動物にもいいことであるのは間違いありません。
愛犬は飼い主のしつけを反映するということを肝に銘じてしつけを行いましょう。