その5の「お手」とその6の「おかわり」は犬のしつけの中ではそこまで重要度の高くないオプションの意味合いが強い「芸」でした。
打って変わって今回の「待て」は数ある犬のしつけの中でも非常に重要度の高いトレーニングで、覚えさせておくと本当に便利です。
この記事では「待て」の意義と具体的な方法について解説していきます。
待ての意義
「待て」という言葉は人間社会の中でも強い抑制の言葉として機能します。特にグループ活動や仕事場などでよく耳にする言葉でしょう。
犬のしつけにおいても同じで「待て」には犬の行動に強い抑制や制限をかける効果があるのです。
これが出来ることでどんなメリットがあるのか、いつ始めればいいのかを解説していきます。
突発的なトラブルの抑制
子犬の時は特に社会性がまだ身についてないこともあって、家庭内外を問わず飼い主の予測がつかない問題行動を起こしがちです。
危機を察知する洞察力も育っておらず、刺激に敏感であるため大きな音だけで飛び出した結果大惨事に遭うことも少なくありません。
そのような突発的なトラブルを「待て」の一言だけで抑制することができるのです。
また、他の犬とすれ違った時も、興奮や不安・恐怖から他の犬に襲い掛かり迷惑をかけてしまうことがあるのです。
そういう時にも「待て」の一言があることで無用な摩擦を減らして充実した安全なペットライフを過ごせるようになります。
拾い食いの防止
二つ目に散歩中の犬が勝手にその辺の草や落ちている食べ物など体に悪いものを拾い食いしてしまうのを防ぐためです。
しかも石ころ・ゴミ・たばこの吸い殻・ビニール袋など食べてはいけないものまで食べて体を壊す恐れがあります。
もし犬が興奮から何かを拾い食いしそうになったら「待て」といって止めてください。
周りの人たちからも拾い食いする犬は行儀悪く見られがちなので、どこに出しても恥ずかしくない犬に育てましょう。
大人しく待機できる
三つ目の利点として、外出時にドッグカフェや動物病院に連れて行った時大人しく待機させることができます。
最近では犬同伴が許可されているカフェも増えているので、そこで「待て」が出来るとお互い安心して過ごせるでしょう。
また、動物病院では不安や恐怖から犬が暴れたり怯えたりするので、そういう時にも「待て」が出来ると強いのです。
単に大人しくするだけではなく、感情を押さえて中立的でいられるようにコントロールできるようになります。
獣医にとっても犬が大人しく言うことを聞いてくれる方が診察がスムーズに進むので負担がかかりません。
いつから?
「待て」に関しては重要度が極めて高いことから生後2~3ヶ月後の社会化期に始めるのがベストです。
トイレトレーニングと並行して覚えさせ、とにかく早めに習得させればさせる程楽になります。
また「伏せ」「おすわり」などを先にやってから最終段階として覚えさせることも忘れないでください。
何度も繰り返しますが、子犬の時期にどれだけしつけをしたかでその後のペットライフの難易度が変わります。
「お手」「おかわり」を覚えさせる前にまずこちらを最優先で習得させてください。
「待て」の具体的なしつけ方
ここからは「待て」の具体的なしつけ方について解説していきましょう。
少し複雑な命令になるので「伏せ」「おすわり」も交えつつ解説していきます。
「伏せ」「おすわり」を先に習得させる
第一段階として「伏せ」「おすわり」が出来ることが前提となりますので、先にこちらを習得させましょう。
「伏せ」は犬を体ごとべったり地面につけさせること、そして「おすわり」は後ろ足を折り畳み待機させることです。
特に「伏せ」は犬が次のコマンドに移るまでに時間がかかるので、長く待機させる有効な手となります。
そしてこの二つを先に習得させるのは「指示があるまで動かないようにする」ことを覚えさせる為です。
この二つを先に行うことで犬の受け入れ態勢が整いますので、まずはこの二つを最優先で習得させてください。
6つのステップ
「伏せ」「おすわり」を習得させたら、次の6つのステップで覚えさせましょう
- 飼い主がリードを左手に握って犬と向かい合う
- 「おすわり」をさせ、出来たら褒める(おやつはあげない)
- 右手で「待て」の仕草を出すと同時に「待て」と命令する
- それが出来たら犬に褒美のおやつを与えて褒める
- 3番目と4番目を集中力が続く時間内で繰り返す
- 最後は犬とアイコンタクトを取り、「OK」と命令して解除する
最初の内は兎に角この基礎基本を徹底して教えるようにしてください。
また、慣れてきたらおやつを与えないようにし、言葉だけで「待て」が出来るようにしましょう。
毎回のごとく「待て」と褒美を繰り返すとそれが当たり前になってしまい訓練の意味がありません。
あくまでも「我慢」を身につけさせるのが目的であるのを忘れないでください。
口調と表情は冷たく厳しく
この訓練の時は特に口調と表情を冷たく厳しくすることを心掛けましょう。
ペットなのでついつい情が移って優しくしそうになりますが、優しい口調・表情では何も伝わりません。
また、逆に厳しくしようとして感情を露わにして怒鳴ったり体罰を行ったりも厳禁です。
犬を委縮させてしまい逆に不安定になってその場にいることさえできなくなります。
あくまでも中立的であることを心掛け、感情を切り離してひたすら訓練に徹しましょう。
長い時間がかかるので覚えるまで根気強く向き合ってください、必ず応えてくれます。
訓練の場所を広げる
ある程度形になってきたら、様々な場所で環境を変えてやってみましょう。
その方が犬にとっても新鮮でマンネリ化を防げる上コマンドの意味を理解できるようになります。
最初は自宅の狭い個室で習得させ、慣れてきたらリビング、庭、散歩中と広げていくことが大事です。
特に散歩中は上記したように様々な刺激があるので、犬の気も散りやすくなり想定外のトラブルが増えます。
その想定外のトラブルを少なくしていくためにも、様々な場所で「待て」を行うことが大切です。
まとめ
「待て」はとにかく犬に我慢・自制心を身につけさせ大人の厳しさを習得させるのが目的です。
たとえ最初はできなくても長くじっくり育て上げていく我慢強さを忘れないでください。
根気よく続けていき、我慢強さをしっかり習得したかっこいい犬を育てていきましょう。