犬の血統書と聞くと皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?
よくテレビ番組やCMなどで「血統書付きの犬」という言葉をお聞きになることがあるでしょう。
またペットショップに行くと「血統書付き」と貼られている犬は普通の犬と比べて値段がかなり高いという声を耳にします。
人間で言うとことろの「上流階級」とか「エリート」とかいうイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、それが何を意味するのか、また何の為に存在するのかを正確に把握している人は意外に少ないです。
今回はそんな血統書の存在意義やメリット・デメリットなども含む知識について話していきましょう。
犬の血統書とは何か?
血統書とは「血統証明書」の略で「血統証」と略される場合もあります。
血統書は純血種を繁殖させるために必要な証明書であり、犬の質や価値を表すものではありません。
したがって、犬種にこだわらない普通の人々には何の意味も持たないものです。
単にペットとして飼うだけなら殆どの飼い主にとっては不要なものでしょう。
それでもそれが世の中に存在するということは一定数それを必要とする人たちがいるからです。
日本では一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が犬の「戸籍」として発行しています。
犬の血統書の存在意義
ではそんな犬の血統書ですが、一体何の為に存在しているのでしょうか?
特定の犬種を飼いたい
血統書は犬の血筋を知る為のものなので中には純血種や良質な犬が欲しいという飼い主も居るでしょう。
そういう人たちにとっては血統書つきの犬を飼うことは意義があるのではないでしょうか。
競技会に参加させる
ドッグショーや訓練・アジリティー競技会は犬種ごとに部門が分かれていたり血統書があることを参加条件にしていたりします。
もちろん血統書を必要とせず、雑種でも参加できる競技会もたくさんありますが、同じ犬種で競いたい方には血統書が必須となります。
ただ、ここまで来るとかなりマニアックでほぼ趣味の領域というか、犬マニアの飼い主やプロのブリーダーになるのではないでしょうか。
特定の犬種を繁殖させたい
プロのブリーダーの多くは特定の犬種にこだわって繁殖を行っています。
販売する際には別の犬種の血が混じっていないことを証明しなければいけませんので、血統書が必要となります。
なので犬の専門家の方々にとっては必須アイテムであり、同時にプロのブリーダーの証明ともなるのです。
逆にいうと、特に犬の種類にこだわりのない普通の人たちにとっては特別買う必要はありません。
血統書の発行に必要なもの
犬種には「犬種標準(スタンダード)」があり、犬種標準を満たしていなければ血統書は発行されません。
その詳細は犬種別に決められていますが、いわゆるボクサーや格闘技などにおける試合前の体重測定などと同じと思って下さい。
逆に言いますと、純血種であるというだけで簡単に発行されるものではないということあり、だからプロのブリーダーが持つことが多いのです。
因みに短頭犬種であるフレンチブルドッグは、鼻が短いほどよいとされてきましたが、短頭種気道症候群という病気を引き起こすことなりました。
そこでジャパンケネルクラブは2017年3月にフレンチブルドッグの犬種標準として、鼻の項目の「たいへん短く」を「短く」に改正しています。
血統書のメリット・デメリット
血統書は犬としての価値を表すものではなく、あくまで繁殖の際の資料や純血種の保存のためです。メリットとしては以下のものがた挙げられます。
- 犬種標準により成犬の容姿が想像しやすい
- 繁殖者が誰なのかが明確になる
- ドッグショーや競技会に参加できる
逆に血統書が無いことのデメリットとしては以下のものとなるでしょう。
- 想像している犬種と違う姿形になる場合がある
- ドッグショーや競技会に参加できない
この辺りでしょうか。いずれにしても繁殖をせず、ドッグショーや競技会に参加しなければ無いことのデメリットはほとんど無いと言えます。
こういう理由からも、血統書付きをわざわざ飼う人はプロの人かお金持ちかに限られるのです。
血統書詐欺
血統書はブリーダーと発行団体の信頼関係で成り立っている部分が多く、悪意のある申請が通るケースも少なからず存在します。
たとえば出生数を実際より多くして申請し、余った血統書を血縁関係のない犬に使ってしまうというものです。
そういった犬を販売するのは詐欺であり犯罪行為なので絶対やらないようにしてください。
ただし、最近はDNA登録が義務付けられていますし、またDNA検査で後から確認する方法もありますので、以前に比べると詐欺の件数は減ってきています。
王侯将相いずくんぞ種あらんや
しかし、血統書なぞ英検やTOEIC・免許証などと同じで資格としてないよりはあった方がマシ程度のものでしかありません。
血統書付きの犬が本当に素晴らしい犬であるとは限らないし、血統書付きでなくとも素晴らしい犬は幾らでもいます。
これは英才教育を受けているエリートの子が必ずしも一流の仕事人であるとは限らないのと同じことです。
就活で言えば、有名国立大学を出ている人が必ずしも社会人として大成するとは限らないのと似ています。
正に王侯将相いずくんぞ種あらんや、犬の素晴らしさは飼い主との信頼関係や普段のしつけが物を言うので血筋は関係ありません。
血統書付きの犬には倫理上の問題点もある
中には純血を保つ為に家族間で交尾をさせるブリーダーもいるので、遺伝的変異や健康問題のリスクと隣り合わせでもあります。
また、血統書付きの純血種同士を交配させたからといって決して完璧な犬が生まれるわけでもありません。
そのように人間が勝手にペットの遺伝子や血筋を操ろうとするのは倫理的に考えていかがなものでしょうか?
つまり血統書が保証する「完璧」と私たちが望む「完璧」の間にはギャップがあるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
血統書は犬の価値を決めるものではなく、犬種標準を重視したドッグショーや競技会への出場を前提にしなければ必要のないものです。
勿論あって邪魔になるものではありませんが、発行するとなると条件もかなり厳しいし手続きの時間と金銭面の負担も大きくなります。
そのようなことに時間とお金を割くのであれば、その時間とお金をペットとの交流や他のことに使った方がいいのではないでしょうか。
勿論存在意義自体を否定はしませんが、本当に必要かどうかは慎重な話し合いを重ねた上でご自身の判断でなさってください。