前回の記事では神秘性の強い最古の犬種・サルーキについてその魅力を余すところなく解説してきました。
そのサルーキと並ぶ「伝説の猟犬」として名高いのがワイマラナーと呼ばれる犬種です。
見た目も細身でどこか繊細な雰囲気も似ていますし、中には両者を交配させたミックス犬もいます。
そんな伝説犬ことワイマラナーの魅力を今回は余すところなく解説していきましょう。
歴史的な背景は勿論入手方法や維持費まで魅力をじっくり掘り下げて紹介します。
基本スペック
まずはワイマラナーの基本スペックについてじっくり掘り下げていきましょう。
基本データ
まずはワイマラナーの基本データです。
・種類・・・大型犬
・大きさ・・・59~70cm
・体重・・・30~40kg(成犬)
・平均寿命・・・11~14年
・原産国・・・ドイツ
ワイマラナーは大型犬としては垂れ耳でつややかな短毛のグレーの毛色を持つコンパクトな猟犬です。
非常に少ないですが長毛タイプもいて、しっかりした骨格に美しいラインを持つ筋肉がつき、堂々と優雅な姿勢で歩きます。
どこかその見た目から厳格な印象を受ける、正にドイツ原産であることを一発で納得させる風貌です。
見た目からに異彩を放つワイマラナーは数ある犬種の中でもトップクラスに格好良い犬種でありましょう。
基本的な性格
ワイマラナーは今でこそ家庭犬として人気の犬種ですが、原産国のドイツを中心に基本的には狩猟犬として根強い人気を誇っています。
性格にも狩猟犬らしさが見られ好奇心が強く飼い主への忠誠心に厚い犬種です。
常に飼い主とともに行動したいさみしがり屋なところがあるのが何とも可愛らしい犬種であります。
感受性が強いので飼い主の気持ちを察し寄り添ってくれるよきパートナーとなるでしょう。
繊細さと警戒心の強さから家族以外には距離を置いて接し時には攻撃的になることもあります。
しかし賢く学習能力の高いワイマラナーはきちんと訓練さえすれば本来の穏やかな性格を見せるでしょう。
無駄吠えも少なく家族への愛情が深い犬種ですが狩猟に対する欲求が強く、闘争本能を時折暴走させます。
小動物や小型犬との同居や多頭飼いは難しいかもしれません。
ワイマラナーの歴史
ワイマラナーの誕生についての記録はほとんど残っておらずさまざまな説があります。
ここが同じ伝説犬でも明確な歴史を誇るサルーキと似て非なる決定打ではないでしょうか。
有力なのは18世紀末ころにザクセン・ワイマール大公カール・アウグストの犬舎で誕生したというものです。
ワイマラナーは大型の獣を狩る狩猟犬として作出されましたが、その後さまざまな犬種との交配で万能の狩猟犬となりました。
ワイマラナーの犬種名は当時ワイマール地方の貴族が独占的に飼育していたため地名に因んでつけられました。
1928年アメリカのハワード・ナイトがワイマラナー・クラブへ入会し、そこから10年後にやっとアメリカでのワイマラナーの繁殖が許されます。
アメリカに渡ったワイマラナーは競技会などで目覚ましい記録を打ち立て、1942年にはアメリカン・ワイマラナー・クラブが設立されました。
ワイマラナーの入手の仕方
ワイマラナーは昔こそ希少種であり、特定の会員しか手に入りませんでしたが今では難易度自体は下がっています。
そんなワイマラナーはどのようにして入手すればいいのでしょうか?
ペットショップよりもブリーダーがお勧め
サルーキは一般での購入が難しいものの、ワイマラナーは人気も出始めてペットショップなどで販売されるようになりました。
ただし、ワイマラナーの子犬は健康管理が難しいので専門的な環境の整っていないペットショップでの購入はおすすめできません。
店員がワイマラナーや大型犬の飼育について知識を持っており、飼育環境も快適なお店である場合話は別です。
しかし、ペットショップ店員でそこまで造詣が深い方はいらっしゃらないので、ペットショップは見送ったほうが賢明でしょう。
そうなると、やはりワイマラナーもブリーダーによる紹介制で購入する方が安全ではないでしょうか。
何より事前にしつけに関するアドバイスを沢山いただけるので、ブリーダーからの購入が最善かつ最短ルートといえます。
購入費は具体的にどれくらい?
買う時には気になる価格ですが、一般的なワイマラナーの価格は子犬で25万円程度の値段がつけられています。
しかし、ブリーダーから購入する時は子犬の交配にかかった値段とそれまでのフード代なども含まれるのです。
こちらも良質の血統を求めると話は違いますが、単純にフード代がかかっているので高いということもあります。
本当に高いものになると30万円以上はよくあることなので、まず経済的に余裕のある人でなければ購入は出来ません。
大型であることと伝説の猟犬であることがこの値段の高さに影響しているのではないでしょうか。
日本で育成しているブリーダーの数自体が少ないので、早めに連絡を取って買いましょう。
購入費よりも餌代がかかる
ワイマラナーの場合購入費もそうですが、それ以上に寧ろ餌代の方に注意を向けていくことが大事です。
大型犬というのもありますが、猟犬として凄く高いスペックを誇るので維持費がとても大変なのです。
ワイマラナーにおすすめのアランズで計算すると、月に27000円ほどかかります。
しつけに使うおやつ代と合わせて月に約32000円ほどなので、年間で38万円かかる計算です。
サルーキ同様非常に高い値段である飼い主泣かせの犬種であることが伺えます。
しかも寿命もそこそこ長いので、まず一般市民に買えるレベルの犬種ではないでしょう。
ワイマラナーの特徴
猟犬として万能なスペックを誇り速く走るために無駄なものがそぎ落とされた非常に荘厳な雰囲気を持つ犬です。
ここではそんなワイマラナーの特徴について改めて解説していきましょう。
洗練された身体能力
ワイマラナーはしっかりとした骨格にしなやかな筋肉を持ち身体能力とエレガントさを兼ねそろえた犬種です。
動きは俊敏で足には水かきがあって泳ぎも得意、更には嗅覚も非常に優れています。
狩猟といってもサーチからアタックまで役割は幅広くありますが、ワイマラナーはどれも卆なくこなせる犬種です。
野外の作業に適しており天候にかかわらず家畜の見張りをこなすので、レベルの高い仕事を振ってください。
その洗練された身体能力に見合う知性と意欲の高さこそが何よりの特徴となるでしょう。
逆にいいますと、ワイマラナーにレベルの低い単調な作業を任せるとストレスが溜まって才能を十分発揮し切れません。
それだけプライドの高い犬種としての遺伝子が深く刻み込まれているのです。
サルーキの外見
毛色はグレー単色の濃淡のみで、金属を思わせるような光沢があるので非常に優雅に見えるのです。
耳は大きな垂れ耳でしっぽは細く長い垂れ尾であり、以前は断尾されていました。
しかし動物愛護の観点などから最近は行われないことも多くなりました。
ロングコートの場合以前から断尾しておらず、それがまた自然さにも繋がっています。
グレーの被毛が森林のなかで保護色となり姿を見失う(獲物から見つかりにくい)ことが多いのです。
そのような特徴からワイマラナーには「グレーゴースト(灰色の影)」の異名がつきました。
完璧主義
そして何よりも性格的特徴の面で上記した部分に付け加えるなら完璧主義が大きな特徴です。
普段は凄く穏やかというか物静かな性格ですが、決して従順ではなく内側に秘めたる芯はとても強いでしょう。
飼い主の指示は素直に聞くとはいえ、どんな仕事もしつけも完璧にこなそうとします。
いわゆる外柔内剛というもので、外面こそ柔らかいですが中身はとても頑固です。
内側に愛情を注ぐ分外来者に対しては排他的で警戒心の強い一面が見受けられます。
そういう犬種ですので、決して飼いやすい性格をしているわけではないことが挙げられるでしょう。
しつけのコツ
それでは改めてサルーキのしつけのコツについて解説していきましょう。
基本的には室内飼い
まず飼育環境ですが、体脂肪が薄く気温の変化や寒さに弱いので、室内で飼ってあげましょう。
普段生活するスペースには絨毯を敷いたりして、体が痛くなったり骨折など怪我をしないよう対策を立ててください。
冬場は服を着せたりして体温調整に気を配り、居心地のいい環境を作ってあげることが大切です。
性格的に考えてもなるべく飼い主や家族が寝る時以外はそばにいてあげる方が安全ではないでしょうか。
しかし、過保護は決して良くないので適度に距離を保ちながら接してください。
とにかく運動させる
ワイマラナーはとても賢いですが、それ以上に何と言っても猟犬としての戦闘意欲が高い生き物です。
散歩や室内の運動だけでは決して満足できないので、必ずドッグランなどの広い遊び場で存分に遊ばせてください。
また、経済力と時間に余裕があればドッグランをはじめとした競技大会に参加させるのもありでしょう。
競争意欲が非常に高いので、ライバルとなる犬がいればいるほど闘志を燃やして成長していくタイプです。
とにかく運動をしっかり行わせてメキメキと実力をつけさせ、できたら褒めてあげてください。
自己肯定感をとにかく高く持たせることがワイマラナーが成長していく秘訣ではないでしょうか。
子犬の時から社交性を持たせる
ワイマラナーは上記してきたように、とてもおとなしく身内以外には排他的な態度を取りがちです。
そうならないように、子犬の時から家族以外の人たちや他の犬との交流を持たせましょう。
そうすれば、いわゆる無駄吠えや噛み癖などをゼロはないにしても減らすことが可能です。
子犬期にどれだけ他の人達と絡ませることが出来たのか次第で大きく変わっていきます。
社交性を持たせるためにも常に外を歩かせたりして視野を広く持たせてください。
そうすることで自ずと快適かつ充実したペットライフになるのではないでしょうか。
ワイマラナーにかかる生涯の費用
さて、最後にワイマラナーの生涯にかかる維持費ですが、こちらは意外にもサルーキ程高くはありません。
ワイマラナーは大型犬ですが、生涯の維持費に関しては大型犬の中でも割と安い方です。
ワイマラナーの飼育にかかる初期費用は「子犬価格」「飼育環境」を合わせた約35万円です。
大型犬の医療費は年間4万円ほどなので、年間費用は26万円になります。
ワイマラナーの平均寿命は11年ほどなので、生涯費用は35万+26万×11年=321万円ほどになる計算です。
サルーキの400万超えに比べると、コストパフォーマンスの点ではこちらの方が飼いやすいでしょう。
決して初心者向きではありませんが、本気で向き合えばこれほど育て甲斐のある犬種もいません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ワイマラナーはコストがとても高い犬種ですが、しかしそれだけ面倒見甲斐もまたあります。
性格的にも大変な人見知りであることが伺えますので、まず初心者には育成不可能と断言しても差し支えありません。
逆にいえば、高いハードルをクリアした飼い主のみが育てられる犬種であるということです。
しかし、十分に育て上げた時がまた素晴らしい犬種なので経済力とチャレンジ精神のある方は是非挑戦してください。
ドイツの完璧主義が生み出した犬種を是非日本においても完璧に仕上げていこうではありませんか。