これまで沢山の犬種を紹介してきましたが、今回の記事はサルーキについてじっくり解説します。
サルーキはあらゆる犬種の中でも最古の犬種といわれていて、現存する犬種の中では希少価値が高いです。
スラリとした手足に美しい顔立ち、優美な容姿を持つ中東原産のサルーキですが、その魅力はどこにあるのでしょうか?
本項ではそんなエキゾチックなサルーキの神秘性の所以や特徴・維持費まで全てをご紹介します。
これから飼おうとお考えの方は存分にその魅力を味わってみて下さい。
サルーキの基本スペック
まずはサルーキの基本スペックについてじっくり掘り下げていきましょう。
基本データ
まずはサルーキの基本データです。
・種類・・・大型犬
・大きさ・・・58~71cm
・体重・・・20~25kg(成犬)
・平均寿命・・・12~14年
・原産国・・・エジプト
実はサルーキの神秘性の半分以上はエジプト原産であることに由来しています。
あのモデルのような手足と首の長さに顔の小ささですから、モテないわけがないでしょう。
その線の細さがどこかやや儚さや繊細で知的な雰囲気を漂わせているのです。
基本的な性格
サルーキに関しては主に以下の性格的特徴があります。
・神秘的で美しい
・もの静かでおとなしい
・臭いが少ない
狩猟犬としての側面を持ちながらも、実は性格はとても温厚で物静かなタイプです。
人間でいえばクラスに一人か二人はいる文学青年・文学少女ではないでしょうか。
猟犬ですが攻撃的な様子は見られず、もの静かでおとなしい性格です。
飼い主を常に立てることを優先し人間のように気をつかう様子も見られるなど繊細な心を持ちます。
自立心が強く少し頑固な部分もありますが、飼い主や家族に対しては甘えん坊な一面も見せるのです。
サルーキの歴史
紀元前6000年以上前の遺跡からはサルーキの特徴そのままの犬の彫刻が見つかっています。
その後紀元前2100年頃の古代エジプトのファラオの墓からはサルーキそのもののミイラが発掘されたのが始まりです。
サルーキはエジプト王家の犬だったので王族と一緒に埋葬されました。何しろあのクレオパトラが可愛がっていましたから。
サルーキはアラビアの遊牧民とともに狩りをしながら旅をして各地で子孫を残していったのです。
アメリカの研究によるDNA分析でサルーキは狼に最も近い犬と発表されたのは2004年のことです。
その後の別の研究で遺伝的に共通点を持つ古い犬種が中東・ヨーロッパ・アフリカを中心に多く存在しているとされています。
サルーキと交雑し独自の発展を遂げた犬たちもいれば、同じ犬種と交配されて純血として生き続けてきたサルーキもいました。
1923年には最初の犬種標準書が作られイギリスケネルクラブに登録され、1929年にはアメリカンケネルクラブにも登録されたのです。
高貴な王家の犬という出自や中東という土地の気候が神秘性の秘密であることがこの歴史的背景から伺えます。
サルーキの入手の仕方
上記したように、サルーキは大変入手難易度の高い犬であり、希少種ではないものの中々手に入りません。
そんなサルーキはどのようにして入手すればいいのでしょうか?
一般での販売・購入は厳しい
サルーキの子犬が欲しいと思っても一般の店舗では購入するのは難しくなってきます。
まずペットショップでの一般販売はされておらず、見かけることはほとんどありません。
予約などを待ったとしても半年〜1年以上と実に長い期間待たされることになってしまうでしょう。
やはり子犬が確実に早く欲しい場合はブリーダーに直接予約して手に入れるのが近道となります。
しかし、日本全国を探してもサルーキを育成しているブリーダーはそんなにいません。
ネットで探しても普通は見つからないので、オフラインでの紹介制が最短ルートではないでしょうか。
購入費は具体的にどれくらい?
買う時には気になる価格ですが、一般的なサルーキの価格は子犬で20万〜30万程度の値段がつけられています。
しかし、ブリーダーから購入する時は子犬の交配にかかった値段とそれまでのフード代なども含まれるのです。
価格が高いサルーキの方が血統が良いということもあるでしょうが、単純にフード代がかかっているので高いということもあります。
本当に高いものになると50万円以上はよくあることなので、まず経済的に余裕のある人でなければ購入は出来ません。
大型であることと王家の優良種であることがこの値段の高さに影響しているのではないでしょうか。
少なくともごく普通のルートで手に入れることは不可能な犬種であることに間違いはありません。
購入費よりも餌代がかかる
サルーキの場合、購入費もそうですが、それ以上に寧ろ餌代の方に注意を向けていくことが大事です。
大型犬というのもありますが、猟犬として凄く高いスペックを誇るので維持費がとても大変なのです。
サル―キにおすすめのモグワン(1.8kg 3960円)で計算すると月に25000円ほどかかります。
しつけに使うおやつ代と合わせて月約30000円ほどなの、年間で36万円かかる計算です。
これまでに紹介してきた犬種と比べて非常に高い値段である飼い主泣かせの犬種であることが伺えます。
しかも寿命もそこそこ長いので、まず一般市民に買えるレベルの犬種ではないでしょう。
サルーキの特徴
王家に仕える犬というだけあって速く走るために無駄なものがそぎ落とされた非常に洗練された美しさを持つ犬です。
ここではそんなサルーキの特徴について改めて解説していきましょう。
サルーキの運動能力
サルーキのかっこいい見た目は決して飾りではなく、凄まじい運動神経と身体能力を誇ります。
全犬種の中で最速はグレーハウンドとされていますが、実はサルーキの方が速いという説すらもあるほどです。
しかし、サルーキがドッグレースに使用される電動ネズミに反応せず走ってくれません。
そのため残念ながら正確に速度を測定することができず、公式には最も速いのはグレーハウンドとなっているそうです。
サルーキの別名は「ガゼル・ハウンド」と呼ばれていて、最高時速97kmとも言われているガゼルを追う狩りに使われていました。
全犬種で最も速いとの噂もあながち間違いであるとはいえず、もしかしたら本当に最速かもしれません。
いわゆるダークホース(穴馬)と言える立ち居位置の犬種でしょう。
サルーキの外見
王家の犬ということもあって優雅な雰囲気があり、威厳と気品を持ち合わせた表情をしています。
それに加えて全てを見通してしまいそうな澄んだ目を持っているという非常に孤高の存在感を放っているのです。
典型的なサイトハウンド(視覚と聴覚を使う猟犬)の特徴を持っています。
長い足と細い顔、走るのを得意にする高い心肺機能を持っており、その意味では最強の犬種ではないでしょうか。
しかし、それがまた同時に人や他の犬を寄せ付けないというデメリットもあるかもしれません。
自立心が強い
そして何よりも性格的特徴の面で上記した部分に付け加えるなら、何といっても自立心の強さです。
物静かな性格ではありますが、決して従順ではなく内側に秘めたる芯はとても強いでしょう。
飼い主の指示は素直に聞くとはいえ、あまりにも強すぎる束縛や支配は徹底して嫌います。
いわゆる外柔内剛というもので、外面こそ柔らかいですが中身はとても頑固です。
そういう犬種ですので、決して飼いやすい性格をしているわけではないことが挙げられます。
しつけのコツ
それでは改めてサルーキのしつけのコツについて解説していきましょう。
基本的には室内飼い
まず飼育環境ですが、体脂肪が薄く気温の変化や寒さに弱いので、室内で飼ってあげましょう。
普段生活するスペースには絨毯を敷いたりして、体が痛くなったり骨折など怪我をしないよう対策を立ててください。
ごはんをあげる時は、体高が高いので食べやすい高さにお皿を置いてあげると食べやすくなります。
食事の時に長い耳が汚れないように、スヌードをつけてあげるのもいいでしょう。
冬場は服を着せたりして体温調整に気を配り、居心地のいい環境を作ってあげることが大切です。
効果的かつ工夫ある訓練を
サルーキは賢く学習能力が高いですが、理不尽な指示には従わなかったり単純な反復訓練には飽きやすい性格です。
外で訓練をさせる際にはしっかり短時間でバリエーションをつけて訓練してあげましょう。
サルーキに必要な「呼び戻し」の訓練は成功体験を増やしてあげることが大切です。
「おいで」の指示を出し、少しでも近くに来たら毎回しっかり褒めてあげてください。
呼び戻しのトレーニングはトリーツ(ご褒美のおやつ)がとても効果的と言われています。
トリーツをあげるのを徹底するトレーニング方法が多いとのことです。
健康管理を徹底する
華奢な見た目とは反対に非常に頑健な犬種で目立つ遺伝病も比較的少ない犬種です。
しかし繊細な性質なのでストレスに弱く、それが病気の原因となることがあります。
来客が続いて気が休まらなかったり環境が変わったり運動不足や気温の変化、時にはフードが変わったら注意です。
他にもストレスから皮膚疾患になったりすることがあるので気をつけてあげてください。
小さい頃から環境の変化に強い犬にしてあげるとストレス性の病気の予防になるでしょう。
また手足が華奢な体型のため、筋肉のついていない若犬の頃や老犬では骨折のリスクが高くなります。
跳躍力がありますが高い所からむやみに飛び降りさせないよう十分注意してあげましょう。
サルーキにかかる生涯の費用
さて、最後にサルーキの生涯にかかる維持費ですが、察しのいい方であればもうお分かりでしょう。
そう、サルーキは大型犬故に生涯の維持費があらゆる犬種の中でもトップクラスに高いのです。
サルーキの飼育にかかる初期費用は「子犬価格」「飼育環境費」を合わせた約40万円です。
大型犬の医療費は年間3.5万円ほどなので年間費用は約31万円になります。
サルーキの平均寿命は13年ほどなので生涯費用は40万+31万×13年=443万円ほどになる計算です。
どんなに低く見積もっても400万超えなので、経済的に余裕がある人でないと飼えないのではないでしょうか。
逆にいえば、値段としてもしつけとしても明らかに上級者向けの犬種だということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
サルーキは今まで紹介してきた犬種の中で最も神秘的ながら、それ故に凄まじくコストも高い犬種です。
性格的にもかなり頑固な犬種であることが伺えますので、まず初心者には育成不可能と断言しても差し支えありません。
逆にいえば、相当に高いハードルをクリアした飼い主のみが育てられる犬種であるということです。
しかし、十分に育て上げた時がまた素晴らしい犬種なので経済力とチャレンジ精神のある方は是非挑戦してください。
トップクラスにハードルが高い分、きちんと育て上げればこれほど頼もしい犬種はいないのもまた事実です。
正に”No pain, no gain.(痛みなくして得るものなし)“という言葉を体現している犬種ではないでしょうか。