前回の記事ではイングリッシュ・コッカー・スパニエルという犬種について具体的に掘り下げました。
そこで気になるのが、果たして世の中には何種類のスパニエルがいるのか?という疑問です。
あらゆる犬種の中でも特に多いといわれるスパニエルの歴史に詳しい方はそういないでしょう。
そこで今回は特徴やその生態と共にスパニエルの種類についてじっくり掘り下げて行きます。
飼い主になる方はもちろんのことスパニエルを飼っていらっしゃる方は是非とも参考にしてください。
スパニエルとは?
そもそもスパニエルとはどういう種類の犬を指すのかをまずは解説していきましょう。
元々はスペイン産だったスパニエルの歴史
スパニエル種とは犬種の1つであり、鳥猟犬グループに属する犬種のことです。
勘が鋭い方はお気づきだと思いますが、名前の響きが「スペイン」と似ていますよね。
そう、イギリス原産となる前まではスペイン原産の鳥猟犬として飼われていたのです。
ところが、イギリスがヨーロッパのあらゆる国を力で捩じ伏せて支配してしまいました。
悪くいえば、「スペインのものはイギリスのもの」というとんだジャイアニズムではないでしょうか。
その為、スパニエル自体の定義並びに歴史は決して明るいものとは言えなかったのではないでしょうか。
最近ではすっかり形骸化している
そんな歴史の闇が垣間見るスパニエルですが、最近ではすっかりそれ自体も形骸化しているといえるでしょう。
狩猟における犬の役目は獲物の位置を知らせるポインターやセッター、獲物を回収するレトリーバーなどの役目があります。
スパニエルはそのすべてをこなす鳥猟犬であり、それ故に小型〜中型でありながらもハイスペックな犬なのです。
今でこそ家庭用ペットになっていますが、しっかり訓練すれば警察犬に数えられている犬種に負けずとも劣りません。
しかし、今やスパニエルの定義自体が曖昧になっておりすっかり形骸化してしまっているのが現状です。
鳥猟犬でない犬種やスパニエル種の血族でない犬種の中にもスパニエルの名前を冠する犬種がいます。
交配によって違う種類のものが出来るので、今は余り関係なくなっているのかもしれませんね。
スパニエルの特徴
スパニエル種は鳥猟犬としての歴史を持った犬種で、現代でも鳥猟犬として活躍している個体も多くいます。
その中にはペットやショードッグとして暮らすスパニエル種も鳥猟犬としての個性を受け継いでいるのです。
ここではそんなスパニエルの特徴を改めて説明していきましょう。
運動欲求が高い
スパニエル種のほとんどが遺伝子の中に猟犬としての闘争本能のDNAを強く残しており、運動欲求が高い犬種です。
現代においても鳥猟犬としての性質があるので、ペットやショードッグの個体でも縦横無尽の活躍を見せます。
少し訓練すれば鳥猟犬として実猟に出られる能力の高さがあり、とても頼もしい存在です。
逆にいえば、家庭犬として飼う方は常にストレス発散として散歩のみならず思いっきり遊ばせないといけません。
運動不足はスパニエルにとって最大の敵なので、しっかり鍛え上げて闘争本能を満たしてあげましょう。
活発だけれどもスマート
スパニエル種は活発な個体が多くいますが、単に活発なだけではなく動きがスマートなのです。
元々は鳥を仕留めるために活動していたので、あちこち飛び回る獲物を仕留めるためには無駄な動きは排除します。
効率よく獲物を仕留めるために動き回り、敵が近づいてくるのを敢えて待っているのです。
そうした自然の生活の中で培われた頭の回転の速さが今でも賢さとなって生きています。
甘え上手であるのも、こうした賢さから来るものであり決して天然のそれではないことを自覚しておきましょう。
逆に言いますと、下手に甘やかすようなことを言ったりしたりしないほうがいいということです。
猟犬としても用いられている
そういうスマートさから現代でも山の猟師はスパニエルを優秀な猟犬として用いることも多いのです。
一言で猟犬といってもそこには様々な種類の猟犬がいて、いくつか代表例を挙げてみます。
・ウサギ狩りが得意なビーグル
・アナグマ狩り専門のダックスフント
・獲物の位置を特定するポインティング
・ドック(ポインター)、獲物を回収するレトリバー
これらはどちらかといえば、持っている身体能力というか真っ向勝負で相手を捩じ伏せるタイプです。
それに比べるとスパニエルの役割はあくまでも「追い詰める」ことにあり、役割としては参謀に近いでしょう。
最終的に仕留めるのはあくまでも猟師ですら、その猟師の顔を潰すようなことは絶対にしません。
その辺りがスパニエルのスパニエルたる所以であり、同時に猟犬としての好感を持たれるところです。
スパニエルは全部で何種類?
それではスパニエル種は果たして全部で何種類いるのでしょうか?
ここではそんなスパニエルの種類について改めて説明していきます。
代表的な種類だけでも約20種類
スパニエルの種類だけですが、何とその代表例だけで約20種類はいるといわれています。
前回ピックアップしたイングリッシュ・コッカー・スパニエルはその中でもコッカー・スパニエルの代表格です。
スパニエルの中でも原種というか源流はイギリス産であり、後はアメリカンやフレンチなど国ごとに異なっています。
こないだこちらの記事でも挙げたことがあるパピヨンは名前こそスパニエルとついていませんが立派なスパニエル種です。
種類を全部論っているとキリがないので、代表的な種類に関しては他のサイトで調べていただきここでは省略します。
とにかく今は凄まじく多くの種類がいるということはまぎれも無い事実です。
絶滅種も中にはいる
これだけ多くの種類がいるスパニエルですが、実は既に絶滅した種もいますのでそちらをピックアップします。
アルパイン・スパニエル(スイス)・・・1830年代絶滅
イングリッシュ・ウォーター・スパニエル(イングランド)・・・1930年代絶滅
ノーフォーク・スパニエル(イングランド)・・・1902年絶滅
トイ・トローラー・スパニエル(イギリス)・・・1920年代絶滅
ツウィード・ウォーター・スパニエル(イングランド)・・・19世紀絶滅
全て20世紀前半までに滅んでしまった種ですが、多くの種が繁栄している華やかさの裏にこんな影がありました。
こうした歴史の陰でどんどん滅んでいくスパニエルも居たことを知るとややいたたまれない気持ちになります。
そう思うと、スパニエル種そのものが滅んだわけではないことをむしろ喜ぶべきなのかもしれませんね。
スパニエルの名を持つ犬種
スパニエル種の中には厳密にいえばスパニエルでは無いものの「スパニエル」の名がついた犬種もいます。
以下リストアップしておきましょう。
・チベタン・スパニエル(トイグループ)
・狆(ジャパニーズ・スパニエル)(トイグループ)
・ペキニーズ(チャイニーズ・スパニエル)
・マニラ・スパニエル(トイグループ)
これらに関しては見た目がスパニエル種に似ているからという理由でスパニエルと言われているのです。
悪い言い方をすれば完全なパチモンですが、しかしこれだけ種類が雑多になると分類自体が意味をなさないのでしょう。
大事なことはあくまでも飼い主の犬に対する愛情であり、名前というのものは所詮後付けのものにすぎません。
そのポイントを決して見誤ってはいけないのでは無いでしょうか。
スパニエル種のお勧め
さて、これだけ多くの種類がいるとどの種類を飼えばいいのか分からないのが現状ではないでしょうか。
そこで今回は目的別にオススメのスパニエル種について改めて解説します。
初心者向けなら愛玩
まず上に挙げた中だと、初心者向けなら純正種ではない愛玩用のスパニエル種がオススメです。
チベタン・スパニエル、狆、ペキニーズ、マニラ・スパニエルは愛玩犬として初心者でも比較的飼いならすことができます。
日本ならば代表格は狆がオススメであり、本格的なコッカー・スパニエルを飼う前段階のスパニエルとしてオススメです。
これらの犬種は小型犬なので購入費はもちろんのこと維持費も純正スパニエル種と比べてそんなにかかりません。
購入費が約17万円、年間の維持費が約11万円で平均寿命が約13年なので生涯費用は以下のようになります。
20万+8万×13年=124万円ほどになる計算であり、イングリッシュに比べると200万以上も安くなるのです。
飼う犬にこだわりがないのであれば、狆などはお手頃価格で飼うことができる犬種でありましょう。
本気で検討するならイングリッシュかアメリカン
次にいわゆる猟師か護衛用の番犬が欲しいと思う方にお勧めなのがイングリッシュかアメリカンです。
経済的な余裕があって、本気で育ちの良さや血統にこだわるなら純正種をお勧めします。
そういう方にはやはり元祖のイングリッシュかその直系のアメリカンがお勧めでしょう。
イギリスもアメリカも土地が広くたくましく育っているので、愛玩犬としてではなく狩猟用として頼もしい番犬です。
どちらの目的で飼うにしても、まず最高の逸品であることに疑いの余地は微塵もありません。
しかし、こちらはどちらかといえば既にブリーダーか1頭目を経験した上級者でなければ無理でしょう。
それでも飼う覚悟がある人だけがこちらの犬種を飼うことが出来るのではないでしょうか。
最上級はアイリッシュ
大型犬として飼いたい人向けであれば、最上級はアイリッシュ・ウォーター・スパニエルです。
あらゆるスパニエル種の中でも最もガタイも大きく運動量も膨大なので間違いありません。
当然ながら値段もかなりバカ高で、購入費だけで約50万円前後、年間の維持費だけで約20万はします。
アイリッシュ・ウォーター・スパニエルの平均寿命は10年ほどなので、生涯費用は60万+26万×10年=320万円となります。
寿命の短さ故にイングリッシュよりやや安めですが、それでも簡単に出せる金額ではないでしょう。
経済的余裕と大型犬であっても飼い慣らせるスキルとマインドが何よりも肝要となります。
種全体としてかかりやすい病気
さて、最後に最も心配であろう病気や健康面に関しても最後の方でお話ししておきます。
かかりやすい病気は犬種によってさまざまですが、スパニエル種全体としてかかりやすいのは以下の病気です。
・外耳炎(耳が垂れている種が多い為)
・皮膚アレルギー
・骨折(小型種のみ)
・股関節形成不全(中型種〜大型種)
・突発性激怒症候群(先天性と後天性の双方あり)
利潤目的に乱繁殖された犬は遺伝的疾患にかかる確率が高いため、注意が必要であることを忘れないでください。
また、そういう乱繁殖されたスパニエル種は愛犬と共倒れになるので極力買わないことをお勧めします。
トラブルを防ぐため入手の際はブリーダーや譲り主の信頼性や入手する犬の家系病を調べてください。
また、何かあれば直ぐに獣医に連れていき診断してもらい、徹底した病気への備えをしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はスパニエル種に関して改めて紹介して参りましたが、実に多くの種類がいることに驚きです。
猟犬から愛玩犬、小型犬から大型犬まで実に幅広い種類がいるので飼い主の好みに応じで選ぶことができます。
しかし、どの種を選んだとしても一度選んだからには最後まで責任を持って面倒を見ることを忘れないでください。
あくまでもスパニエルが健康的に生きていけるかどうかは全て飼い主の腕に寄りかかっています。
そのことをしっかり忘れず、是非とも素敵なスパニエルとのペットライフを送れるようにしましょう。