さて、前回の記事で過酷な犬の飼育放棄の現実をご理解いただけたのではないでしょうか。
表面上だけ見ると華やかそうなペットライフもその裏には深い闇と残酷な現実があるわけです。
そこで今回は今まで書いてきたことも踏まえながら、初心に戻ってみようではありませんか。
初心者に必要な犬の心構えと失敗しない犬選びのコツをより実践的なレベルで解説していきましょう。
飼い主になる予定の方はもちろん動物について勉強・研究なさっている方も参考になるはずです。
ペット飼いも段取り八分
これまでの記事をご覧いただければ分かるように、犬を飼うのは決して簡単なことでも楽なことでもありません。
何事も段取り八分で事前準備がものを言うのですが、ペット飼いにおいてもそれは同じことです。
犬の購入を決める人の多くはペットショップで安易な衝動買いをしてしまっており、コロナ禍の現状では益々その傾向が目立ちます。
しかし、そのような計画性のなさで行動して痛い目に合うのは飼い主よりもむしろ飼われる犬なのです。
犬は決して金儲けの道具でもなければ使い捨ての消耗品でもなく、その命が粗末に扱われることがあってはなりません。
初心者だからこそ、何よりも犬を買い始める前の心構えが大切であることを忘れないでください。
初心者に必要な飼育の事前準備
新しく大切な家族の一員になる愛犬をあなたは10~15年近くの長期にわたり幸せにし続ける自信と覚悟がありますか?
毎日の生活の中で愛犬のためにしてあげなくてはいけないことを事前に確認してみましょう。
軍資金
まず何より欠かせないのは犬を飼うのに必要な軍資金であり、最低200万〜400万以上は見積もっておいたほうが良いでしょう。
犬種次第ではもっとかかりますが、まずは犬を一生養っていけるだけの安定した経済力は絶対に必要です。
どんなに犬を愛する心があったとしても、愛した結果それを育む能力がない者にその資格はありません。
ですから、まず犬を飼うだけの十分な軍資金は絶対に準備してからスタートしてください。
そんな余裕がないのに始めようと思ってもどこかで破綻して飼育放棄に繋がりかねません。
世の中お金が全てではありませんが、やはりお金はそれ自体無くしては生きていけない大事なものです。
犬を飼うだけの十分なスペースと時間
2つ目に、犬を飼うだけの十分なスペースと時間が犬を飼う上では必要となります。
犬の散歩に始まりトイレ・食事・遊び・健康診断や定期的な手入れなど常に気を遣わないといけません。
中でも問題になるのは衛生面であり、ペット飼いの家に行くと室内はペットの臭いで充満していると言われます。
経済力だけではなく、物理的な意味でも犬の面倒を見る時間を多く取ることが大事です。
経済力があっても時間に余裕がなかったり家が狭かったりする場合は問題でしょう。
そのような問題に発展しないように十分な時間と室内のスペースは常に余裕を持って備えておいてください。
愛犬を育てる我慢強さ
そして3つ目に、人ならざるものである愛犬を育てる我慢強さこそが最も必要とされるものです。
万一愛犬が病気になったり問題行動を起こしたりしたときでも愛犬に対して根気強く育てる覚悟はありますか?
健やかなる時も病める時も愛犬を時間をかけてたっぷりと愛情を注いで育てる覚悟は絶対に欠かせません。
しかし、多くの飼い主は当初そのつもりであっても最後までそのモチベーションが続かず飼育放棄をします。
そういう飼い主に足りないのは成功するまで長期で続けていく我慢強さ・ストイックさです。
どんなに経済力や十分なスペース・時間があっても心の部分ができていなければ意味がありません。
そのことを早い段階で自覚した上で動くことが何よりも大切ではないでしょうか。
犬選びを失敗しないコツ
以上の3つが出来たら今度は犬選びの段階ですが初手で最も大事なのはここです。
選ぶ犬種を誤ってしまうことがない為のコツを細かく解説していきましょう。
ここがしっかり出来るかどうかでその後のペットライフが分かれます。
紹介制が1番
前回の記事をご覧になった方はお分かりだと思いますが、1番は紹介制で犬を購入することです。
犬を飼っている友人・知人から譲ってもらうのであれば購入費用は不要ですが、彼らはプロではありません。
一方で同じ紹介制でもブリーダーの場合はプロの視点があるために購入費用こそかかりますが良質の犬を選べます。
ただし、これが最も大切ですがこの時犬選び以前のブリーダー選びを決して間違えないで判断してください。
真っ当なブリーダーの方が多いですが、中には悪質なただ犬を売って金儲けしたいだけのブリーダーもいます。
ここを失敗してしまうと後で取り返しのつかないことになるのでブリーダー選びは慎重に行いましょう。
この高いハードルをクリアすることができれば、良質な犬を飼うことが出来るのです。
ペットショップや保護施設は避ける
逆にペットショップや保護施設で飼うのはあまりお勧め出来ず、初心者はなるべく避けた方が良いでしょう。
ペットショップに関しては前回も書いたように安易な衝動買いがあり、よく相談もしないまま簡単に買えてしまうからです。
また、ペットショップの店員さんはブリーダーとは違い販売のプロではあっても育成のプロではありません。
あまり良質な犬選びやしつけのアドバイスなどを貰うことは出来ないのでやめておいた方が良いでしょう。
次に保護施設ですが、こちらは飼育放棄を始め様々な手垢のついた犬が多いので育てるのに苦労します。
人間でいえば少年院送りにされた問題児を預かるようなものなので、初心者では飼い慣らせない可能性も高いです。
ですから、ペットショップや保護施設はあまりお勧め出来ません。飼うにしても2頭目以降にしましょう。
トライアル期間を設ける
3つ目に大事なこととして飼い主と愛犬の相性を確かめるために3ヶ月〜半年程トライアル期間を設けましょう。
どんなに愛犬を可愛がって一緒に暮らしても、そこにはやはり相性の良し悪しが存在します。
そこでまずはお互いが上手く行くかどうかを期間を設けて面倒を見る時間とすることで判断を焦らないようにするのです。
最低3ヶ月一緒に暮らしていれば、犬との相性や一緒に暮らしていけるかどうかという判別は可能ではないでしょうか。
そのような期間をしっかり設定して見極めを行うことで万が一上手く行かなかった場合の飼育放棄も回避できます。
短期目線ではなく長期目線が最も大事なのでトライアル期間を設けましょう。
やはり小型犬が1番おすすめ
そこまで完了したら次はどの犬種にするかですが、改めて初心者に向いているのは小型犬ではないでしょうか。
もちろん小型犬の中にも飼いやすい犬種とそうでない犬種が居ますが、経済的負担は大型犬に比べると遥かに楽です。
また、体が元々小さいため暴れたり吠えたりしてもそんなに大きな怪我などには発展しにくいこともあります。
初心者にオススメの小型犬に関してはこちらで参照いただくとして、大型犬はお勧め出来ません。
大型犬は全部がそうではありませんが、基本的にライオンやトラと同じ猛獣の類と認識しておきましょう。
また、維持費もすごくかかる上寿命も短いので初心者が買うべき犬種ではないでしょう。
犬を飼い始めた後にすること
犬は飼ってそれで終わりではなく、飼った後も当然責任を持って育てていかなければなりません。
とはいえ、いわゆる細かい定期検診やしつけの方法などはここで述べずそれ以外の部分で述べます。
定期的なブリーダーへのホウレンソウ
犬を譲ってくださったブリーダーと定期的なホウレンソウを行い、犬のしつけについて逐次報告しましょう。
その際に進捗の報告からしつけの上で分からないことや聞きたいことなどをリストアップしておくことが大事です。
初心者はわからないことが多いので、そこを知っているふりをするのではなく知らないことを素直に聞きましょう。
素直に聞かれて悪い顔をするブリーダーはいないので、わからないことはどんどん聞いて吸収していきます。
常に聞きたいことは用意しておいて、段階を追う毎にその質問のクオリティを高めてください。
質問力はブリーダーとの関係性において最も強力な武器になりますし、すごく良い関係性が築けるはずです。
しつけ教室にも積極的に参加する
余裕があれば、しつけ教室に参加するのも有効な手段だと思うので積極的に参加してください。
ブリーダーとはまた違った視点からのしつけに関する基礎基本の知識を体系的に学ぶことができます。
他の飼い主もいるので、そこで別の飼い主と仲良くなったり情報交換できたりと交友関係も出来るのです。
ブリーダーがしつけの「質」を深める存在なら、しつけ教室はしつけの「幅」を広げます。
お金と時間はかかりますが、そういうところにも顔を出すことで次々とチャンスが広がるのです。
また、しつけ教室の先生と仲良くなっておくとブリーダーとはまた違った情報が得られるでしょう。
市販のしつけ本は買わないのが吉
そしてこれが最も大切ですが、市販の犬のしつけに関する本は無駄な出費なので買わないでください。
書店などに売っているしつけ本は大抵が又聞きの知識であり、情報としての価値は薄いです。
また、著者のポジショントークといった要素も多分にあるので生きた情報にはなりません。
本に載せられているのはあくまで出版社にとって都合のいい2次情報・3次情報でしかないのです。
そのようなものに投資するくらいならブリーダーやしつけ教室の先生が提供する1次情報の方が信頼できます。
経験や体験を通して得た知識ほど実用的かつ説得力のあるものはございません。
「なぜ?」を徹底して問い続けること
犬の飼育の初心者がなすべきことはとにかく徹底して「なぜ?」を問い続けることです。
・なぜ犬を飼う必要があるのか?
・なぜその犬を選ぶのか?
・なぜそのブリーダーさんから犬を買うのか?
・なぜそのペット用品を買うのか?
・なぜその場所にトイレや寝室を設置するのか?
・なぜしつけ教室に行くのか?
・なぜそのドッグフードを選ぶのか?
とにかく犬の飼育に関するあらゆることに「なぜ?」を問い続け、犬を飼う動機を明確に掘り下げてください。
そこがしっかり見えてきて初めて犬を飼う理由が見え、十分な説得力を持つものになるでしょう。
その辺りがクリアになっていないのに、世の流行りや周囲のブーム・自己顕示欲で安易に飼うべきではありません。
子犬の命に対する投資になるのですから、そこを履き違えて間違ったしつけをしないようにしてください。
初心者だからこそその辺りは慎重に万事を徹底して行うべきなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はより実践的かつテクニカルな方向から初心者が犬を飼う時に大切な心構えを解説してきました。
初めての買い物だからこそ、決していい加減な選択をしてはならないことがご理解いただけたでしょう。
人生における1つの決断と言っても過言ではないほど大切な買い物であり、衝動で行ってはいけません。
極めて論理的かつ建設的に考えていき、犬を飼う理由が明確になった時こそ買うべきではないでしょうか。
大量生産大量消費の感覚ではなく、じっくり10年・20年先を見据えて後悔のないペットライフにしてください。