今回からしばらくは犬の多頭飼いについての話題となりますが、その第一弾は多頭飼いの犬同士の喧嘩です。
ただでさえ一匹ずつでも大変なのに、それが複数飼うとなれば、その苦労は尚のこと計り知れないでしょう。
最初はうまくいくと思っても長い目で見ると、多頭飼いは崩壊のリスクすらも抱えない博打のようなものです。
その主たる原因の一つが愛犬同士の喧嘩なのですが、なんと多頭飼いの犬の喧嘩は止めてはいけないと言われています。
非常に驚きの事実ですが、その原因と対策を今回の記事ではじっくり掘り下げていきましょう。
犬の喧嘩は狼の遺伝子の残滓
犬の祖先がかつて群れで暮らす習性のあった狼だということは本ブログで何度も強調してきました。
狼は群れを作って生きることで効率よく狩りを行って食事をし、外敵から身を守るために群全体の安全性を高めるようにしてきました。
こういったことから、犬が群れを作って暮らすのは本能であり、狼時代の遺伝子の残滓が本能的な欲求として残っているのです。
しかもその統率力たるや半端なく、強いリーダーから順番に獲物の柔らかい部分を食べていくなど縦社会によって成り立っています。
人間社会だとこのような権威性のある制度は現在パワハラだ何だと批判の的になりますが、犬の社会ではそうした厳しい上下関係があるのです。
この序列争いが遊びの延長犬社会でのルールの教育・威嚇・喧嘩という形で上の立場になったり逆転されたりすることで順位が決まっていきます。
多頭飼いで強い犬が高齢犬になることで、序列が低かった犬との順位が逆転することは容易にあり得るので一定ではありません。
人間が愛犬と暮らす環境下ではリーダーが「人間」となり犬は強いリーダーに従う、服従する本能があるため飼い主の指示に従います。
それが多頭飼いのケースだとさらに家族という群れの中でリーダー以降の順位つけを行う過程で愛犬達が「喧嘩」をするのです。
犬同士の喧嘩は人間と違って単なる感情ありきの傍迷惑な行為ではなく、生き残りをかけた熾烈な争いということでしょう。
喧嘩の原因
このように、犬の遺伝子が狼に由来することから喧嘩は犬の本能が形を変えて残ったものであることがご理解頂けましたか?
それを踏まえた上で、今度は喧嘩の原因や種類を解説していきましょう。
遊びの延長
犬同士の遊び方はとても激しく、特に若い犬の場合は顕著ですがほとんどは若さゆえのやんちゃ程度です。
まるでプロレスをするかのようにもみくちゃになったり歯をあてたり唸ったりしますが本気ではありません。
飼い主が初めて見るとびっくりしてしまうかもしれませんが、基本的には思う存分遊んでいるだけです。
犬は無駄な争いは望まないので、相手に怪我をさせるようなことにはならないことがほとんど。
日常の中で咄嗟に犬同士が喧嘩を始めたら8割はこちらだと思ってください。
上下関係の順位付け
2つ目に考えられるのが最初の部分で説明した上下関係の順位付けであり、特に初期段階で行われます。
多頭飼いは人間とそれぞれの愛犬同士が同じ空間で過ごす為にきちんと統制の取れた組織づくりが必要です。
多頭飼いで新たに仲間が加わった時や子犬が成犬になった時は今まで強かった犬が高齢犬になった時に喧嘩が起こることがあります。
先住犬と新規で入ってきた犬との関係性においては特にこれが大事であり、まずここで上下関係を位置付けるのです。
そしてここが大事ですが、その関係性は永遠ではなく犬の成長と共に大きく変化していくのでいつでも逆転はあり得ます。
ここをしっかり作っておくことこそが大事ではないでしょうか。
先輩犬・後輩犬への嫉妬
これは人間と暮らす環境の中で育まれた後天的な習性ですが、飼い主を巡って犬同士が水面下の構想を繰り広げるケースです。
愛犬同士の喧嘩は嫉妬という名の負の感情から生まれることもあります。
例えば愛犬達と生活している中で家に飼い主さんが戻ってきた時に最初に触れたり声をかけたりする犬がいたとしましょう。
そうなると、先に声をかけられなかった犬の方は「私を愛してくれていないの?」という嫉妬に苛まれます。
また、多頭への食事の与え方も大事であり、可愛いからといって一番最後に群れに加わった子犬に最初に与える場合も要注意です。
その時も先住犬は「新入りが来たら古参の俺は大事ではないんだ」と口に出さずとも思わせてしまうことになります。
こういった理由から先住犬のストレスが高まり嫉妬から喧嘩をすることや子犬や後輩犬が自分の方が優位であると考え喧嘩になることがあるのです。
嫉妬というと醜い感情ですが意外とバカに出来ないものであり、普段表面化しない分それが爆発した時の怖さは計り知れません。
多頭飼いの喧嘩への対策
こうしてみると、犬の喧嘩と一言でいっても実に多くの理由があることが伺え、決して一筋縄で行くものではないことが伺えます。
これらの原因を食い止める為に飼い主が出来る対策は何でしょうか?じっくり解説していきます。
下手に仲裁しない
これが一番大事であり、同時に一番難しいことですが犬同士の喧嘩は下手に仲裁しないのが最善の策です。
特に初期の先住犬と後住犬の喧嘩は挨拶も兼ねた上下関係を決めるための儀式といっても過言ではありません。
だから、そこに飼い主が入ってしまうとその辺りが有耶無耶になって後に大きな火種となって爆発します。
また、犬は狼としての闘争本能を持った生き物であり、喧嘩をすることでお互いに加減を覚えて社会化していくものです。
人間同士だって喧嘩をしながらお互いにどこまでやっていいのかという加減を覚えて成長するでしょう。
ですから、余程大惨事に発展するような喧嘩じゃない限りはそっと見守るのが一番です。
食事のタイミングと場所を同じにしない
2つ目に食事のタイミングと場所を同じにせず、しっかり差別化を図っておくことが大切です。
こういうことをすると犬の差別に繋がると思う方もいるかもしれませんが、同じタイミングで近くで食べさせる方がかえって危険でしょう。
何故ならば犬種によって食べるスピードは違うものであり、一緒に食べさせるとペースの違いから小競り合いが発生します。
どういうことかというと、早食いしたほうがまだ食べている犬のフードを食べようとするなどしてペースがかき乱されるのです。
なので、それぞれのハウスで扉を閉めた状態で食事を摂らせると、犬は落ち着いて食べることができ無駄な争いは生じません。
また、自由に広い空間を使えるようにすることで犬同士が心地いい距離感でお互いに接することが出来ます。
ストレス発散をさせる
喧嘩をしているときの犬は興奮状態にありますので、ここで仲裁に入ると飼い主が噛まれる可能性があります。
そこで普段からどんなときでも飼い主の呼び戻しに従えるように訓練しておくことが喧嘩を制止させる際に有効です。
まずは「おいで」に反応できるように日頃からご褒美を使って学習させることが解決のカギとなります。
そしてその上で運動不足などのストレスをしっかり解消する手段を確保しておきましょう。
犬同士の喧嘩にならないように、常日頃から十分に運動しストレスを発散させてあげることも重要です。
別々の場所で飼う
犬種の中には闘犬などの歴史を持つ犬やそもそも多頭飼育に向いていないような犬種だっています。
どの犬が多頭飼いに向くのかはまた別の記事で書きますが、そういう犬を他の犬種と一緒に飼うのは危険です。
そのようなと時は最終手段として同じ家でも飼育場所を完全に分けるなどの決断が必要になるかもしれません。
もし、そのような喧嘩が発生したときには人間が手で押さえたり引き離したりするのは大変危険です。
そうならないように別々の場所で管理をすることもまた立派な一つの手段といえるでしょう。
先住犬と後住犬の相性
こうして見ていくと、犬種同士の相性もまた大切であることがわかるでしょう。
多頭飼いの喧嘩を止めさせるための犬種の相性についてここでは見ていきます。
同じ犬種の方が相性は良い
これに関してはまた違う記事で触れますが、同じ犬種の多頭飼いは問題なく過ごせるケースが多いです。
気性が荒くないタイプの犬種同士であれば尚更のこと大きな揉め事もなく過ごせるでしょう。
母犬が出産をして生まれた子犬が大きくなり一緒に暮らしているケースもこれに相当します。
犬社会のルールを母犬が教育することで群れを形成しやすく仲良く過ごせるケースが多いです。
テリア系の犬種は多頭飼いが難しいといわれることがありますが、犬のしつけ方やコントロール次第で問題なく暮らすことができます。
逆に言えば違う犬種を住まわせる場合相性をしっかり判断していかないと上手くいきません。
未去勢のオス犬同士は喧嘩しやすい
去勢していないオス犬同士は縄張り意識や支配性が非常に強い戦闘民族のようなものなので注意が必要です。
自分の愛犬同士の喧嘩だけでなく他の犬との喧嘩、発情期を迎えたメスがいると興奮するといった状態に陥ります。
また、室内のマーキングの問題なども出てくる可能性がありますので、十分に気をつけてください。
多頭飼いで未去勢のオス同士の喧嘩で悩まれている場合は、繁殖をさせるつもりがないのであれば去勢手術を行うことをおすすめします。
去勢手術は費用がかかりますが、ここをきちんとしておかないと後々大変なことになるので気をつけてください。
サイズ違いの犬は一緒にしないこと
これは以前にも少し触れましたが、大型犬と小型犬のような組み合わせはなるべく一緒に飼わない方が安全です。
何故かというと喧嘩になった時に小型犬はどう足掻いたって大型犬の圧倒的な力には敵わないからです。
サイズ違いの犬を一緒に住まわせることはそういうリスクを常に孕んでいるものだと思ってください。
喧嘩になったら小型犬は大型犬に勝てず、小型犬が知らず知らずの内にストレスを抱えることになってしまいます。
大型犬なら大型犬同士、小型犬なら小型犬同士で住まわせる方がいいでしょう。
犬同士の喧嘩は永遠の課題
お伝えしてきたように家庭内での身近な犬同士の喧嘩は多頭飼いには付き物ですから、止めることはできません。
むしろ社会的な序列を確立しようとして生じることが多いようです。
序列が確立すると争いの頻度は減っていきますが完全に決着がつくことはないといわれています。
人間だって兄弟姉妹で育てると年齢が近ければ近いほど余計に喧嘩が勃発するものでしょう。
犬同士もそれは同じことであり、マイナスと捉えずかい主の成長の機会と捉えて付き合うことが大事です。
そのような感覚で付き合えば、多頭飼いにおける喧嘩も決して悪い事ばかりではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は多頭飼いにおける犬同士の喧嘩について様々なか観点から論じてきました。
元々は狼の遺伝子が本能として残っているが故に起こる訳であり、決して悪いことではありません。
ただし、飼い主としては何が原因で喧嘩しているのかをよく見極めて動く観察力を常に持つことが大事です。
そこに余計な干渉は不要であり、また犬同士の相性をきちんと見ながら上手に付き合ってください。
上手く付き合うことができれば、多頭飼いの生活も決して悪いものではないでしょう。