前回の記事では犬の鳴き声が迷惑防止条例違反に抵触する可能性があることと、その対策をお伝えしました。
しかし、もっと肝心なことが実は忘れられていて、そもそも犬の鳴き声にはどんな意味があるのか?ということです。
以前にも無駄吠え含めて犬の鳴き声に関する記事を書きましたが、今回はより深く突っ込んだ犬の鳴き声そのものを見て行きます。
飼い主の皆さん、そしてこれから飼い主になろうという方々は是非当記事で「鳴き声とは何か?」について勉強してください。
また、犬について沢山勉強なさっている方も「初心忘るべからず」で原点回帰してみてもいいのではないでしょうか。
「無駄吠え」は正式名称ではない
さて、まずはここでみなさんにお詫びというか、訂正しなければならないことがあります。
それは「無駄吠え」は決して正式名称ではない俗語であり、少なくとも行動学用語としては間違いだということです。
吠えることは犬にとって大事なコミュニケーションであり、そこには様々な機能や意味・動機が隠されています。
それを勝手に人間側の都合で「無駄吠え」と称して、一方的に犬の鳴き声を否定しているというじ実に残酷な行為です。
子育てに例えるならば、子供の好きなものや個性を表面だけで捉え頭ごなしに否定し「いい子でいなさい」とする教育ママと変わりません。
もっとも、無駄吠えと呼ばれるものが実はそうではないことはこちらの記事でも説明していますが、再確認も込めて説明しました。
犬の鳴き声の中に無駄なものなど何1つなく、大事なことはそれをしっかり掴んでやっていくことではないでしょうか。
犬の鳴き声の意味
無駄吠えと称される犬の鳴き声は果たして行動学の観点から見て、どのような意味があるのでしょうか?
これまでも紹介してきた犬の鳴き声に関して、行動学の観点からまとめ直してみました。
縄張り性攻撃
これに関しては以前にも説明しましたが、特に家や庭など縄張りの境界に向かって近づいてくる外来者に向かって吠えるものです。
犬のマーキングや無駄吠えと呼ばれるものの多くはこの縄張り意識からくる防衛本能で威嚇を行っています。
これは狼時代からの名残として遺伝で残っているものであり、どんな犬種であれ大なり小なり持っている本能です。
この縄張り性攻撃を防ぐことは室内飼いであったとしてもかなり無理があるのではないでしょうか。
どんなリスクだってゼロにはできないわけであり、この縄張り意識から来る攻撃もまた決してゼロにはできません。
飼い主への要求
飼い主に向かって吠える時は大抵何かを要求している時であり、その内容はTPOによって違います。
たとえばご飯であったりトイレであったり遊びであったり病気のサインであったりと色々異なっているのです。
これに関しては室内飼いであれば特に問題なく対処できる範囲であり、ご飯やトイレはきちんと対応してあげましょう。
しかし、遊びとなるとちょっと話は違ってきて、遊びを要求する場合構ってちゃんになる可能性もあるのです。
そうなると依存症になりがちなので、依存にならないようどのサインかはしっかり見極めて判断してください。
よその人や犬に対する攻撃
上記の縄張り性攻撃ともかぶりますが、よその人や犬に対する警戒心から来る攻撃として吠える行為が挙げられます。
散歩中などにその傾向が見受けられ、警察犬などはこの習性を更に特化させたものになっているのです。
狼時代の闘争本能が刺激されてこの状態になるわけであり、この時の犬は完全な臨戦態勢にあるでしょう。
一種のバーサーカーモードなので、迂闊に近づいて止めようとすると反撃を食らって思わぬ怪我をします。
触らぬ神に祟りなしで、ここはそっとしておくのが賢明な判断です。
分離不安症
そしてこれが最も厄介なパターンですが、飼い主不在の時に突然鳴き始める分離不安症というパターンです。
犬だけではなく猫にも見られる現象であり、飼い主がいなくなるとそれだけで不安になってしまいます。
これはもう飼い主が犬を飼う上でずっと付き合っていかなければならない非常に難しい問題でしょう。
依存症というのは後天的に生じて来るものであり、距離感を上手く取らないと引き際を誤ってしまいます。
そうならないような普段からの対策がとても大切になって来るので、是非気をつけて回避してください。
鳴き方による違い
基本的な犬の鳴き声の意味を抑えた上で、今度は鳴き方による鳴き声の意味の違いについて見ていきます。
ワンワン
犬の鳴き声と言ったら誰しもが「ワンワン」を想定するのではないでしょうか。
ワンワンにはいろんな意味があり、嬉しさや楽しさ、果ては警戒心から怒りまで様々な種類が想定されます。
同じワンワンでもTPOによってその意味は異なるので、歓喜か警告か臨戦態勢かはその時その時での判断が必要です。
中でも警戒すべきは警告や臨戦態勢の時であり、この態勢になると完全に飼い主の存在すら消えて敵となります。
ゾーンに入っているので、迂闊に話しかけず沈静化するのを待ちましょう。
キャンキャン
キャンキャンには大きく分けて2種類あって、1つが要求やおねだりであり、もう1つが痛みを表す時の声です。
前者の場合は大体サインでわかりますが、ご飯やトイレならともかく遊んで欲しい時は注意しましょう。
この時のキャンキャンに応じてしまうと犬は要求がエスカレートしてしまうので、絶対に応じないようにすることです。
また、後者の場合は甲高い「キャン」という声のみで、人間で言う所の「イテッ」と漏れてしまう声に相当します。
一回だけなら問題ないですが甲高い声で「キャンキャン」と繰り返し鳴くようであれば、急いで動物病院へ連れて行ってあげてください。
クーン
鼻にかかったような鳴き声は苦手なものや初めてのものに対して不安を訴える声で、上に挙げたものだと分離不安症の時に見られますね。
痛みを感じて「クーンクーン」と鳴く場合もあるため、犬に異変がないか気を付けて見てあげてください。
また飼い主や上位の者に対して高い鼻声を伸ばすのは「あなたに服従しています」の気持ちで、お腹を天井に向ける服従のポーズが見られるでしょう。
そして最も甲高く叫ぶ時は楽しく遊んでいるときや飼い主のお出迎えなど、興奮が強いときの声です。
こちらは完全に興奮していて冷静さを失っているので絶対に応じないようにしましょう。
ウーッ
臨戦態勢をとりながら「ウーッ」と唸るのは威嚇や攻撃の声は非常に分かりやすく、警察犬などに見受けられるでしょう。
こうなった時は尻尾を立てて、完全に戦闘態勢に入れるよう前のめりの姿勢で身構えているので要注意です。
この時は完全に理性が解放されて狼としての野性味が剥き出しになっていますので注意してください。
迂闊にテリトリーに入ったりすると噛まれる可能性があり、日常生活でも犬同士だとこういうことが起こります。
特に慎重なタイプの犬種を連れて歩く時は注意して散歩させるようにしてください。
犬の鳴き声に対するしつけ・対策法
ここまで見ていくと、犬の鳴き声には無駄吠えと呼ばれるものも含めて様々な意味があることがわかるでしょう。
それを踏まえて、ここでは犬の鳴き声に対するしつけ・対策法を解説して行きます。
我慢させる
まず大事なことは要求吠えに対しては一切の無視を貫き我慢することを覚えさせてください。
ごはんやおやつ、お散歩前の要求吠えには、愛犬を我慢させるしつけが有効です。
犬が要求吠えしても一切応じないという厳しさ、心を鬼にするその姿勢こそが大切ではないでしょうか。
ですから、まずは犬が要求吠えをしてきたら飼い主は一切構うことなく、鳴き止むまで待ってあげましょう。
そうすれば犬も吠えたところで無駄であるということを学習するので、とにかく無視を貫くことが大事です。
警戒吠えも無視
警戒吠えなどに対しても基本的には無視する姿勢を貫くことによって犬に我慢を覚えさせましょう。
気が立っている時は誰も手がつけられないので、発散するまで好きにさせてあげるのが一番です。
犬は学習する動物のため、いいことも悪いことも覚えてしまいますから、ここで調子に乗って構ってしまうと余計につけあがります。
そのため、「吠えたら飼い主が何かをしてくれる」と犬に思い込ませないことが大切であり、ここでもひたすら無視を貫いてください。
飼い主も噛まれたくないでしょうし、犬はとにかく闘争本能を満たしてあげることが何よりも大切です。
来客やサイレンには天罰を
来客時やサイレンなど、警戒心からくる鳴き声に対しては天罰式でのしつけが効果的ですので、是非実践して見てください。
犬がなにかに反応して吠えたら、近くで大きな物音を立てる、犬の側に物を落とすなどして、「吠えると嫌なことが起きる」ことを学習させます。
ここで大事なのは飼い主が天罰に関わっていると犬に知られないよう、さりげなくやるのがポイントです。
また、犬が吠えるのを思いとどまっているときや吠えるのを止めたときには、思い切り褒めてご褒美をあげましょう。
ほかにも、犬が吠えそうなときにテレビやラジオを付けて別の音で気をそらす、無駄吠えの原因となるチャイムの音を変えるなどの対策があります。
TPOに応じた正しいしつけの方法
犬の気持ちが分かるからと言って吠えるのを注意しないのは問題であり、必ずその場でしつけるようにしてください。
無視が大事とは書きましたが、注意しないままでいると無駄吠えが多くなり、しつこく吠えることで要求が叶えられると思ってしまいます。
今まで説明してきたように、犬が吠えるのには様々な理由があり、吠える理由に応じたしつけをすることが大事です。
吠えたらすぐに注意するという行動はNGですので、犬の気持ちを察し、何回鳴いても鳴きやまない場合にしつけに踏み込みましょう。
特に警戒心による無駄吠えは上記したように一番しつけを行うべきだと言えるのではないでしょうか。
飼い主は何があろうと決して犬を甘やかさず、鳴き声の裏にある理由や背景を正しく読み取って適切なしつけを行ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
犬は鳴き声や鳴き方によって様々な感情表現ができる動物であることを今回は改めて説明しました。
どんな意味があるのを知るだけででも愛犬とのコミュニケーションが大きく変化し、より良いものとなっていくことでしょう。
とにかく大事なことは犬の鳴き声がどんな理由や背景があってのものなのかを正確に把握することです。
無駄吠えだと思っているものでも実は無駄がないことが改めて分かっていただけたのではないでしょうか。
飼い主と犬の双方が手に手を取って素敵なペットライフを送るようにしてください。