春にはポカポカ陽気になって愛犬が窓際でウトウトなんていう場面を結構見かけるという人は多いのではないでしょうか。
人間でも春になるとあくびが多くなると言われていますが、犬も例外ではありません。しかし、中には夏・冬になってもあくびをする犬もいます。
そう、一言で「あくび」と言っても、眠いだけではなく実は色々な意味があることを知らない人は意外と多いものです。
眠くないはずなのになぜかあくびをしていたり、何かをやっている時急にあくびをしたりするなど、犬独自のコミュニケーション方法を使っている場合もあります。
決して眠気だけではなく、様々な行動があるわけであって、今回はその原理をじっくり掘り下げていきましょう。
飼い主も、そうでない方も是非犬の「あくび」について一緒に考えていただきたいところです。
犬のあくびに込められている気持ち
犬があくびをする姿はなんとも愛らしいものですが、犬のあくびを単に愛らしいだけで捉えることは危険だとご存知でしょうか。
なぜなら、あくびには犬の気持ちが込められているからであり、しかもその気持ちは決して普段は表面化することのない潜在意識の表出でもあるのです。
日常生活で繰り広げられている様々なシチュエーションから犬があくびをする理由の裏には様々なサインが隠されており、そこを見抜けるかどうかが大切でしょう。
そこで大切になってくるのは飼い主の観察眼と知識に基づく適切な対応措置であり、改めて犬のあくびに隠されたサインが何かを読み取ってください。
そのサインの種類と原因さえわかれば、対策を打つことができますので、絶対に見逃さないことが大前提です。
良い犬のあくび
犬のあくびには良いあくびと悪いあくびがあります。ここで紹介するのはまず良いあくびです。
では、その良いあくびとは果たして何なのか、それを以下ご覧ください。
眠気
犬があくびをする1つ目の理由は単純に「眠いから」であり、私たち人間が眠気を感じるときにあくびするのと同じです。
あくびの多くのケースは退屈や疲労感からくる眠気のサインとして表れ、脳の働きが鈍ってきたときに、多く酸素を取り入れ覚醒を促す役割があります。
またそれだけでなく、口を大きく開けさせることで顔の筋肉を伸縮し脳の活性化につなげる効果もあるのです。
あくびは人間においても犬においても、眠気を解消するメカニズムとして大変重要なものではないでしょうか。
もしあなたの犬があくびを繰り返しているなら、眠いのに眠れる状況でなかったり、何か疲労を感じたりしているのかもしれません。
この場合は特に何かの病気というわけではないので、健康な証として見逃してあげましょう。
人のあくびが伝染した
犬があくびをする要因として2つ目にあげられるのは人のあくびの伝染です。
私たち人間も普段の生活のなかで人のあくびがうつってしまった経験が一度はあるのではないでしょうか。
このあくびが伝染する現象は「共感あくび」と言われ、社会的動物である私たち人間にとって必要不可欠な感情を共有しようとする能力が無意識に働いて起こる現象です。
自分に近しい人物であればあるほどこの現象は起こりやすいと言われていますが、犬も人間と同じくあくびが伝染することがあります。
東京大学の研究結果によると、犬も人間と同様に見知らぬ人よりも飼い主など身近な人のあくびのほうが伝染しやすいようです。
もしあなたの愛犬が自分につられてあくびをしていたら、それは強い親密度を示していますので、嬉しいサインの可能性もあるのでぜひ注目してみてください。
争いを避けようとしている
犬はほかの犬とケンカに発展しそうになったとき、自分に争う意思がないことをあくびで示す場合があることをご存知でしょうか?
実はこれはコミュニケーションの一環であり、あくびをしている側はあくまで相手に敵意がないことを示すためにあくびを行っているのです。
つまり、犬にとってあくびは相手に和平交渉を持ちかける立派なコミュニケーションツールとして使われるということを意味します。
また、いたずらをした犬を叱っている最中などに犬があくびをすることがありますが、これを決してふざけているなどと思わないでください。
人間からすれば「ちゃんと聞いてるの?」と思ってしまいますが、実はこのようなときにもストレスや緊張のほかに「争いたくない」という意思が表れているのです。
犬がそのようなタイミングであくびをしているときは「反省しているんだな」と判断し、叱るのはほどほどに接してあげるのがいいでしょう。
悪いあくびのサイン
犬のあくびは全部が全部悪いものばかりではなく、いいものもあることが上記3つの例からわかっていただけたことでしょう。
次は悪いあくびのサインを3つ紹介していきます。果たしてどのようなあくびが悪いあくびなのでしょうか?
緊張している
犬があくびをする理由の4つ目に「緊張」が挙げられ、これも私たち人間が一度は体験したことがあるのではないでしょうか。
生物が起きているときに活発になる交感神経が異常な緊張状態を緩和するためにあくびを起こしているということです。
犬が緊張するときにもいくつかのパターンがあり、いたずらをして飼い主に叱られた時や見知らぬ人に触られた時などは犬は強い緊張感を覚えます。
もしそのような状況で犬があくびをしているなら、緊張から自分を落ち着かせようとしているのかもしれませんので注意しましょう。
緊張は生理現象として大切な体の働きですが、過度の緊張は愛犬に悪い影響を及ぼしかねません。
愛犬があくびを連発している場合は、原因探ったうえで、緊張をほぐしてあげる工夫をしてください。
ストレスが溜まっている
ストレスを感じたときにもあくびをする傾向があり、このあくびは犬の代表的なストレスサインと言われ、犬がストレスを感じているかどうか見極める重要な要素の一つです。
トリミングや爪を切っている間に見られるあくびは、ストレスからくるものが多いので、絶対に見逃さないようにしましょう。
また、病院嫌いな犬の場合診察や獣医師さんに対してストレスを感じ、あくびを連発してしまうケースも多いのです。
言葉でのコミュニケーションがとれない犬のストレス源を完全に取り除くのは難しいですが、飼い主の心がけ次第である程度の軽減はできます。
犬にとって過ごしやすい飼育環境づくりはもちろん、運動やスキンシップなどでストレス発散できるように工夫しましょう。
病気のサイン
犬は病気が原因であくびをする場合もあり、下記のような症状が見られたらそれは病気のサインかもしれません。
- あくびの回数が多い
- 顎がガクガクと震えている
- 口臭がいつもよりきつい
- 舌の色がおかしい
普段のあくびと違った兆候があり、改善の様子が見られない場合には早めに獣医に相談しましょう。
犬の病気は飼い主による発見が難しく、治療の開始が遅れてしまうケースが多いです。
病気が悪化する前に、小さな変化をなるべく見落とさないよう日頃から注意深く観察してください。
犬のあくびの良し悪しを見極めるポイント
こうして見ていくと、普段の生活においてのあくびリラックスしている時のあくびに関しては全く問題ないと言えます。
しかし、日常のあくびが最近多すぎるように感じる」「あくびをしながら怯えている」などは病気やストレスの可能性もあるのです。
それを明らかにした上で、犬のあくびの良し悪しを見極める重要なポイントがどこにあるのかを以下分析していきましょう。
あくびしたときに鳴かないか
あくびをしながら声を出す時には「フワー」というような声の時は甘えている場合が多いので問題がないことが多いです。
しかし、あくびの際に「キャン」と鳴いたりいつもと違う鳴き方の時は口の中が痛いというアピールの場合があるので注意しましょう。
その場合は口や歯など口内部のどこかが荒れているサインであり、それを見逃さないようにしてください。
少しの見落としが後々とんでもなく大きな病気につながる可能性もあるので、気をつけるよう注意です。
顎がカクカクしていないか
歯が抜けてしまったり歯石等が歯茎に当たって痛がったりしている場合もありますので、その辺りもしっかり見ておきましょう。
また、顎関節症のように顎の噛み合わせが悪い時にあくびのように大きく口を開ける動作の後顎の噛み合わせが悪くなることもあります。
口を全開にしてあくびをできない、あくびの後に顎をカタカタと震わせるなどの症状が続く場合には歯周病の可能性もあるので注意しましょう。
歯周病に関しては以前の記事にも書いたように多くの犬がかかってしまう病気なので、見つかったら即動物病院へ駆け込んでください。
舌の健康状態
犬は口を開けてと言っても簡単に開けてはくれませんので、あくびをした際にぜひ口の中を覗いてみてください。この時舌の色が紫や白色になっていませんか?
舌の色が紫の時は「チアノーゼ」が考えられ、歯茎の色なども紫色になってしまいます。
チアノーゼは低酸素状態に起きるので呼吸器疾患などが疑われます。早急に獣医師の診察をお願いしましょう。
また、舌の色が白い時には貧血が考えられ、飼い主が気づくほど白くなっている時には重度の貧血の可能性もありますので早急に動物病院を受診してください。
貧血には他の病気も隠れている可能性がありますので、注意が必要となります。
あくびから考えられる病気
さて、いいあくびだけではなく、悪いあくびもありますが、その場合どのような病気が考えられるのでしょうか?
改めて以下にまとめてみましたので、参考にしてください。
低血糖
血液の中の糖分が減少して脳の働きが低下する状態で、脳の働きを活性化させるために酸素を送り込もうとしてあくびが増えます。
特に、チワワなどの超小型犬や子犬に多いようですので、ドッグフードなどによる栄養管理をしっかり行いましょう。
貧血症
貧血になると酸欠状態になるため、あくびが多くなりますので、こちらも気をつけてください。
元気が無く動きたがらない、おしっこの色が赤い、呼吸が早い、歯茎など口腔内が白っぽくなるなどの症状が現れたら注意が必要です。
うつ病
犬は実はとてもデリケートなのでうつ病にかかりやすく、長時間強いストレスを感じたり、長時間のお留守番でひとりぼっちの時間が長いなどといった要因でそうなることがあります。
原因はその子によって様々ですが、元気が無く、食欲が低下、あくびばかりしていて病院へ行っても原因がわからない場合はうつ病の可能性もあります。
歯の不調
上でも説明しましたが、歯の不快感や歯が痛む時などはいつもと異なるあくびをする事があり、歯周病の可能性が考えられます。
あくびをしながら「キャン!」と鳴いたり、声を出すなどの症状が出たりしたら、もしかしたら歯が痛いというサインかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
犬のあくびには秘められたさまざまなメッセージやサインがあり、いいサインもあれば悪いサインも当然あります。
そのサインの意味を理解して接すればあなたと愛犬の関係はよりよくなることでしょう。
人間とは違って犬には犬なりのサインがありますので、絶対に見落とさないようにすることが大事です。
飼い主の洞察力を用いることができれば、犬のそうした癖を簡単に見抜くことができます。
少しでも犬の不安をなくし、より良いペットライフを送ることが出来るようにしていきましょう。